【第四十七話】白銀の戦争 3
「おぬし等、ちゃんと解っておろうな?」
「ああ、次は要注意人物への集中砲火だろ?」
「ならば良い。……行け」
トモダチ、英雄の2人が敵陣に突っ込んだ。
『良いか? まず、試合開始と共に拙者がおぬし等に雪球を投げる。必ず取れ。恐らく、向こうは足立とよーこで旗を取りにくる。時間短縮のため、雪球は持っておらぬだろう。そこで、亀山。おぬしにやってもらいたいことがある』
『オレにか?』
『うむ。2人が旗に辿り着く寸前に、何でも良い、動かすには手間の掛かる物を青魔術で呼び出し、旗を守れ。あの先生のことだ。了承するであろう。そして、皆で2人に雪球を投げる。よーこは分からんが、足立なら恐らくこれでアウトになろう』
ここから初見は、いくつかのパターンに分けて作戦の説明をした。そして、
『この戦いにて、最も注意が必要な敵軍の人物は――』
トモダチは、その人物を見据える。
『よーこだ。最初に行う作戦にて、よーこをアウトに出来なかった場合、何よりも優先して狙う。この時、よーこが敵陣に戻っていたならば、トモダチと清華で突っ込み、接近戦を試みてほしい。炎魔法が使える者が行った方が良いからの』
だが敵陣に突入する行為は本来は危険、くれぐれも気を付けろ、と初見は最後に言っていた。
「アウトになるなッスよ? トモダチ」
「そっちこそだぜ」
そして、2人はよーこに狙いを定める。
「魂胆が丸分かりだねぇ。見透かすまでもない」
一瞬にして、視界からよーこの姿が消える。
「それでワタシをアウトにする気かい?」
背後。トモダチは慌てて振り向く。
真っ先に目に飛び込んで来たのは、雪球。詠唱を唱えている暇は無い。
トモダチは間一髪それをかわすと、素早く照準を合わせて雪球を投げる。
「ただ投げるだけでは届かないさ」
よーこは当たり前のように炎で弾いた。
(詠唱無しの炎攻撃とかアリかよ……)
「残念。これは“狐火”という種族としての能力だからねぇ。アリさ」
この状態でも思考を見透かしている辺り、かなり余裕のようだ。
自軍からの援護射撃もあるが、その全てを避けるか炎で弾いている。
手元の雪球は1つ。下手に投げられない。
「だったら――」
詠唱。
「動きをどうにかして止めるぜ」
草魔法第三番の二『メガ・バイン』。無数の蔓がよーこに襲い掛かる。
「これも炎で弾けるさ」
よーこは火球を放つ。だが――
「!?」
蔓は燃えることなく、よーこを捕らえた。
「………なるほど、雪か。雪を蔓に付着させて、湿らせていた訳か」
「その通りだぜ。こうしておけば、一瞬じゃ燃えねぇ。正直、避けに来たらどうするか考えてたけど、そうじゃなくて良かったぜ。これで、あんたの動きは封じた」
「はっはっはっ。確かにそうだ。一本やられたよ。それでは、ワタシからも一つ」
「?」
「君達の敵はワタシだけではないぞ?」
「トモダチ、後ろッス!!」
ポス、という音が背中からした。
「……なっ……!」
「友枝、アウトー」
確かにトモダチは、敵軍からの攻撃は注意していた。だが、今の攻撃だけは――全く、気配すら感じることが出来なかった。
「――――」
雪球を当てた不知火 噤は、真後ろに立っていた。
「ま、ワタシも終わりだがね」
英雄の投げた雪球がよーこに当たった。
「山中、アウトー」
「……トモダチがアウトとなったことは惜しいが、よーこはアウトに出来た。そして、人数も6対5。こちらの方が戦況は有利」
「となると、アレ行くのか?」
「うむ、最重要作戦に移る」