【第四十六話】白銀の戦争 2
「……何でおれは見学なんだよ」
「富士田。初見から聞いた話だと、前の一件で全身の骨格、筋肉、内臓全部潰されたらしいな。しかも、まだ治っていない」
「うっ……」
「魔力切れになったら、お前、死ぬぞ。体育の時間も含め、暫くの間、激しい運動は禁止だ。そして何故、俺がお前にこれを言わなければならん。自己管理くらいは、お前自身がやれ。そもそも、お前は……」
「あー! あー! うるせぇよ、ハク! わかったっつーの、自分の事は自分でやれってことだろ、はいはい!」
「……ふん」
「はい、じゃー全員コートに入れー。ルールはさっき言ったとおり、フォワード4人とバックス3人。フォワードは自軍のエンドラインより後ろに下がれないぞー。敵陣に進入できる人数は同時に3人まで。敵の雪球に当てられたやつは即退場だぞー。それと、雪球は事前に90個ずつ用意しておいたー。それぞれエンドライン後方のシェルターの後ろに置いてあるから、フォワードは直接雪球を取りにいけないぞー。ちゃんと、バックスと連携することだー。勝利条件は、フラッグ奪取か、敵軍全滅だぞー」
「二回も言わなくていいですよ」
「審判諸々は、おれがやるからなー。それじゃー、始めー」
こうして、気の抜ける試合開始宣言とともに、AチームとBチームの雪合戦が始まった。
「オッシャア! 打ち合わせ通り行くぞ、よーこ!」
「了解した」
Aチームのフォワード、足立とよーこが試合開始とともに駆け出す。
二人は左右に分かれて、Bチームの陣地に侵入。そして、相手に雪球を投げさせる暇を与えずに、敵陣のフラッグにまっしぐら。
その間、僅か1秒。
「マジかよ」
篭は、思わず声を出す。
「もらったァー!!」
「初見の読み通りだな」
青魔術の物体召喚。あらかじめ、指定しておいた物を呼び寄せる。
「!?」
それは、1メートル程度の大きさの鉄の甲羅。
そして、すっぽりと旗を覆い隠す。
「アリかよ、そんなの!?」
「面白いから、オッケー」
「そんなことより、自分達の身の心配した方がいいぜ?」
トモダチの言葉に、足立とよーこは周りを見る。
雪球を持ったBチームに囲まれていた。
「何で、全員がすでに雪球持ってんだァ!?」
「こっちには、コントロール抜群の人材がいるからな。お前達が来るまでに、もう配り終わってたぞ」
次の瞬間、足立とよーこに向かって一斉に雪球が放たれた。
「逃げ場がねェー!!!!」
足立は断末魔の叫びとともに、雪球の直撃を2発受けた。
「足立、アウトー」
よーこは自分に飛んできた雪球を炎で掻き消し、無事であった。
「それアリか!?」
「面白いから、オッケー」
「この審判、無茶苦茶だ!!」
足立は文句を言いながら、コートから出ていく。
よーこは一旦、自陣に戻り、態勢を立て直す。
「あ~あ……、足立が早速アウトかぁー……。だから、もう少し確実な作戦で行こうと言ったんだ、全く」
「あはは、仕方ないよ、高田君。やらないより、やった後悔の方が良いって言うしね」
「だが、結果的には足立一人のみが退場。こちらにとって損な事にしかならかった訳だ、南条」
「それを言われると痛いな、ハク君」
「まぁ、あの作戦考えたのは足立自身だから、責任があるとすれば、あいつだけだけど。それより、どうするんだ?旗、取りにくくなったけど」
「作戦変更が良いと思うぞ、ワタシは。あの甲羅、300kgを超しているしね。動かすには、時間が掛かるぞ」
「そこの無口二人は何か意見ある?」
「…………」
「――――」
「決まりだ。作戦を変更する」
「そうだな」
「雪球命中による敵軍全滅だ」
まだ続く。