【第四十五話】白銀の戦争
天気は曇り。
一晩で降った雪は見事に積もっていて、辺りは一面の銀世界と化していた。
「そーゆーわけで、今日の体育は、雪合戦をするぞー。お前らもその方が良いだろー」
「先生」
「何だ、亀山ー」
「物凄く寒いのですが」
「子供は風の子だー」
「いや、オレらもう義務教育終わってる年齢なんですけど」
「まだまだ餓鬼だー」
「それ、悪口になってません!?」
一寸八分 雄々羽先生。体育担当の教師だ。
見ての通り、何か少し抜けてる先生だ。
「ちゃんと、フィールドは用意しておいたぞー」
先生が腕を広げた方向を見れば、そこには白く染まった校庭に、決まった形で張られたロープが。
「何ですか、コレ」
「雪合戦の正式コートだぞー。サイドライン40m×エンドライン10m。エンドラインから8mの所にバックラインが引かれてるぞー。センターラインを境に自陣、敵陣に分かれて、それぞれの陣地の真ん中に設置されているフラッグを取るか、雪球を当てて敵軍全滅で試合終了だー。それと、各陣地にはシェルターが三つずつ、センターラインの真ん中にも一つあるぞー」
「何ゆえ、ここまで真剣にやってんですか」
「お遊びでやってても面白くないだろー。やるからには、本気でやるんだよー」
……まったく、先生の遊びに付き合わされてる感じがする。
秀の奴、こんな時に風邪で休みやがって……。そういえば、まーさんも休みだな。
二人揃ってどうしたことか。
「それじゃー、チームをA、Bに分けるぞー。そーだなー………、男女それぞれの名簿順で交互に分かれろー」
「どういうことですか、それ?」
「Aが1、3、5……、Bが2、4、6……ってことだー」
「何でそんな変な分け方……」
「安直じゃ面白くないだろー」
……この先生の判断の基準は、『面白い』か『面白くない』からしい。
Bチームサイド。
「同じチームだぜ、篭」
「そうだな、トモダチ」
「それにしても、Aチームのメンバー強すぎないか?」
相手のチームを見る。
足立、筧、ハク、高田、南条、不知火さん、よーこさんの7人。
それに対してBチーム。
オレ、トモダチ、魚正、英雄、初見、水島さん、ヒナさんの7人。
「無理だろ、コレ。向こうのチーム、足立を抜かして、どいつもこいつも異能揃いじゃねぇか」
「やる気無くすぜ」
「……それ、本気で言ってるのか?」
オレとトモダチは、声の主に方に振り向く。
「先生も言ってるだろ、やるからには本気でやるって。少なくとも、あたいはそのつもりだ」
水島さんだった。
「……ま、れんちゃんに賛成。わたしも出来る限りやるよ」
ヒナさんも。
「筧が相手って時点で、あまり気乗りしないけどな……」
「そうッスね。でも――」
『勇者』の二人も。
「強大な敵に立ち向かう『勇気』くらいは、ないといけないッスからね」
何やらチームが一つになっている感じがした。
「……だが、相手も相手であろう」
初見が口を出した。
「真っ向から挑むのは無謀というものだ」
「じゃあ、どうするんだ?」
「拙者が策を講じる。少し聞いておれ」
そんなわけで、寒いが、無駄に熱い雪合戦が幕を開けた。
あ、続くのか、これ。