【第四十三話】ある寮部屋の風景 3
ボク達の寮部屋。
「腕の調子は大丈夫ッスか、魚正?」
「ああ、動かしても違和感無いし、普通に魔力も溜められるし、心配無さそうだ」
この寮部屋は、ボク、海藤 魚正、清華 英雄の三人で共同使用している。
そして全員が『勇者』。
「どうッスか、Lv4相手は。やっぱ、キツいッスか?」
「そうだな。全力でギリギリってとこだ。俺じゃ」
「…………」
ボクは10秒で片が付いたことを思い出した。
「オイラ、あんまLv4以上と戦ったことないんスよね。それより下は腐るほどあるッスけど」
『カーネリアン』というのが、この男のコードネーム。
『勇者』の中で、『スモーク』と同程度に高い位。決して、実力が低い訳ではない。
「ま、そりゃそうだろ。Lv4なんて13人しかいないんだからな。俺だって数えられるくらいしかないぜ」
「…………」
恐らく3桁。
複数同時を除けば、多分50程。
「……なぁ、筧。少しは、お前も話に乗れよ」
「………聞いている」
ボク達の寮部屋は、こういうもの。
とある寮部屋。
「ま、結構調子は良くなったみたいだけど、一応、まだ授業は休んでおきな」
「うん。ありがと、れんちゃん」
宇佐見 菊代。
曲者揃いの6人の女子の中では、多分、最も真面な人間である。
「しっかし、菊代。あたいも長い事あんたと一緒にいるけど、未だに理解できないね。何であの魔眼の所有者になったんだ?」
「……う~ん………」
宇佐見は少し考え込む仕草をするが、すぐに止め、
「やっぱり……その、思い出せないんだよね。その辺の記憶、空っぽでさ」
たはは、と苦笑いを浮かべた。
「……ま、何かあったら、あたいに何でも相談しな。あんたの10倍は、人生過ごしてるからな」
「さすが、魚人」
「人魚と言え、人魚と」
水島 清憐は、訂正を要求した。