【第四十二話】執行の戦跡
『魔界』の中の最深部。空は黒雲で覆われ、辺りは禍々しい空気が漂っている。
そんな所に『悪魔の城』は建っていた。
「第三班と第五班は、2階第4小部屋の修理にまわれ。第六班は、3階第5廊下だ」
彼女の名はペイモン。Lv4の『悪魔』であり、現在の『魔王』の側近。
「やっほ~、ペイモン。大変だね~」
「アスタロトか。何の用だ」
「会議始まるから来い、って~」
「そうか。ラバル、アバリ、後は任せる」
ペイモンの部下である2人の『悪魔』は、頷いた。
「……ふむ、全員揃ったところで始めるか。ペイモン」
「はい。今回の議題は、『元魔王抹殺運動』の次計画についてですが、その前に前回の失敗の整理を。生徒等と戦闘し敗北した者の意見を伺います。では、マルティム」
「生徒の実力が想像以上ですね。恐らく、無策で挑んでの勝利は不可能かと」
「ハッ、てめぇが弱ぇだけだろが」
クロセルが口を挟んだ。
「クロセル、今は会議中だ。それに、お前が言える状況でもない」
「うるせぇな、デカラビア。オレは、騙し討ちで『聖装』の一撃を喰らっただけだ。まともにやってりゃ、楽勝なんだよ」
「静粛に。では、クロセル。どうするつもりで?」
「決まってんだろ。同じ策で行けばいい。要は、ゼブルがあのガキを殺せばいいんだろ? だったら、そこんとこ改善すりゃいいだろが」
「そうですか。では、今回戦闘不参加のマラクス、ウィネ、ベリス、ベリアール、デカラビアの方からは、何か?」
すると、デカラビアが口を開く。
「同じ策、というのは無理だ。奴等も次からは警戒する。俺が校庭に仕込んだ青魔術陣も効力を失っている」
「ハッ、じゃあどうするってんだよ」
デカラビアは策を述べた。
とある寮部屋。
彼女はここ数日間、気を失っていた。
原因は、魔眼の長時間持続による魔力不足と精神力切れ。
そして、ついさっき目が覚めたところだった。
まずは、状況確認。ここがどこなのか、一体いつなのか。
大方のことを把握し終えると、彼女は窓の外を見る。
空は黒く染まっていたが、妙に明るかった。
彼女は、数日前の一件で『悪魔』が言っていたことを思い出す。
――てめぇ、何を失った?――
それは、思い出したくないこと。
思い出したくない、過去のこと。
いや、違う。思い出したくないのではない。
「……それすら、忘れちゃったのかもね」