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僕の世界  作者: Sal
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【第三十九話】執行編:終戦と帰還

 見ている分には『魔王』の方が優勢だった。


 麻央さんが接近戦しか出来ないこの状況で遠距離攻撃を行い、近付かれたら雷の剣で攻撃して麻痺を狙う。こんな時に動きを封じられたら、一瞬で勝敗は決するため、麻央さんも慎重に攻めているようだった。


 時折、よーこさんの解説を受けながら、僕はこの戦いの行く末を見ていた。


 結果から言うと、麻央さんはやっぱり強かった。不利な戦況だろうと、彼女は見事にそれをひっくり返した。


 もう、見ていて可笑しかった。


 あらゆる攻撃を全て避け、やっと相手が隙を見せた瞬間に一発。


 それだけで戦闘は終わった。



「終わったね、麻央さん」


「……うん」


 麻央さんが僕らに近付く。


 すると、不意に麻央さんの体が傾いた。


「え、あ、おっとっと……」


 慌てて僕は、麻央さんの体を腕で支える。


 様子を見ると、麻央さんは気を失っていた。


 魔力は無尽蔵だから大丈夫だけど、強力な魔法、魔術を扱うための精神力が切れてしまったようだ。


 ……って、それよりこの状況は………。


「いかがわしいことを考えているねぇ、秀くん?」


「ちょっ、よーこさんっ! 勝手なこと……!」


「はっはっはっ、冗談さ、冗談」


 ……まったく、顔が熱い………。


「……とりあえず、これはよーこさんに任せる」


「うむ、了解した」


 僕は、麻央さんのことをよーこさんに任せると、倒れている『魔王』を見つめている筧君に話しかける。


「トドメ、刺すのかな?」


「………何もしない。………今回のこの『魔王』の目的は、黒井 麻央の抹殺のみ。『悪』の布教とは、関係ない。そして、この『魔王』は即位以降、布教活動を行っていない。まだ、罪が無い」


 淡々と言うと、筧君はこちらを向く。


「………君は、どうする?」


 筧君は普段、あまり抑揚を付けないで会話するが、この時は確かに語尾を上げた。


「僕も、何もしないよ。確かにこの人……人じゃないか。この『魔王』がしたことは許さないけど、何も命までは奪わない。『罪を憎んで人を憎まず』だ。……あ、また人じゃないか」


 僕はこほん、と咳払いをした。



「だから、とにかく、さ。戻ろう。みんなのところに」



 僕は、篭が渡した紙切れを取り出す。


 そして、4人で転移した。






 秀達が転移を終えると、そこは広間のような場所だった。


 そして、『悪魔の城』にいるクラスメイト全員がいた。


「遅ぇぞ、秀。」


 篭が言う。


「学校に戻る準備は出来たのか、篭?」


「とっくに終わってる。待ちくたびれたぞ」


 確かに、広間には大きな青魔術陣が書き込まれていた。


「それじゃ、全員揃ったとこで帰るぞ、みんなぁ!」


 そう言って、篭は青魔術の詠唱をする。


 そして、辺りは光に包まれた。











 バアル=ゼブルは、目を覚ました。


 すると、近くに見慣れた『悪魔』の姿が。


「最終段階は失敗だね~、ゼブル。返り討ちにされるし、情けは掛けられるし、Lv4も5人倒されるし、惨敗だね~」


「黙れ、アスタロト」


 アスタロトは、大きく欠伸をした。


「……で、どうするの? 今、ペイモンが敗戦処理に回ってるけど」


「貴様も手伝って来い」


「面倒だな~……」


 肩をだらんと下げて、ぶつぶつと唸った後、アスタロトは転移した。


 そして、『王の間』に一人になり、バアル=ゼブルは呟く。


「いつか、必ず奴を殺す」


 『元魔王』へのリベンジを心に誓う『魔王』であった。











 僕らは、学校の校庭に転移した。


 そこには神谷先生がいた。


「すまなかった。今回は、学校側こっちのミスだ」


 そう言って、先生は深々と頭を下げた。


 とりあえず、事情はもう伝わっていたらしい。どういう経緯かは知らないけど。


「やめてください、先生。似合いません」


「そこかよ」


 篭がツッコミを入れる。


「でも本当に謝んなくてもいいぜ、先生。全員、戻って来れたし。まぁ、二人だけ寝てるけど」


 トモダチが言う。


 すると、先生は頭を上げる。


「……ま、お前等のことだから、無事でいるとは思ったけどな。確かに、全員戻って来れて良かった。………つーわけで、お前等はもう部屋に戻れ。話は一人一人、後日に聞く」


 先生は、解散、と言って校舎に戻って行った。


 そして、僕らもそれぞれ自分達の寮部屋に帰って行った。






「おい、秀。お前、まーさんの様子見に行かなくて大丈夫なのかよ」


「うるさいな、トモダチ。ヒナさん達が何とかするだろ」


 同じ寮部屋の人だし。


「っていうか、まーさんの方は大丈夫なのかよ。随分、疲れてるように見えたけど」


 篭が尋ねる。


「まぁ……かなり高難度の魔法とか使ってたしな……。まる一日は、覚めないかも」


 エクサ級の魔法とか、ほんと久々に見たよ。うん。


「なんだ、やっぱ心配してんじゃねぇかよ。訪ねて来いよ」


「お前はしつこい」






 翌朝、麻央さんは教室に来ていて、僕は安堵した。






【執行編:完】

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