表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の世界  作者: Sal
32/172

【第三十二話】執行編:個々の力

「ハァ……ハァ……」


 僕はよーこさんの後に付いて、走っていた。


「どうした秀くん。もう少しペースを落とすか?」


「いや、このスピードのままでいい。構わず、走ってほしい」


「うむ」


 やっぱ、少し『真偽の決定』を使いすぎたか。後の戦いに影響させないようにするには、一度に4、5回が限度だな。


「……む?」


「どうした、よーこさん」


「……麻央が、若干危うい状況に陥っているようだ」


 ……まじか。


「なるべく急いでくれ」


「了解した」


 よーこさんは軽く頷く。


「だが、その前に――」


 よーこさんは走るのを止める。


 僕も止まる。



「邪魔者がいるようだ」



 黒いローブを着ていて、金髪。顔に不思議な紋様が刻まれている。


 『悪魔』がそこに立っていた。


「これ以上、『悪魔』としては、先に行かせるわけにはいけませんね」


 その『悪魔』は丁寧な口調で話す。


「秀くん。今から言うルートを覚えてほしい」


「構わない」


「ここの突き当りを右に曲がって、最初に見える階段を上がったら左へ。3番目の角を右へ曲がったところにある、踊り場のある階段を上がったら、派手な扉がある。それを開けばいい」


「わかった、よーこさん」


 僕は走り出す。


「先に行かせないと――」


 それを阻もうとした『悪魔』をよーこさんが遮る。


「君の相手はワタシだよ、マルティム」


「!」


 僕は麻央さんのところへ急いだ。






「おらぁ!」


 クロセルは氷の剣を振り回す。


 宇佐見は、それを見切って避ける。掠りでもしたら厄介なことになる。


「ちっ、すばしっこいな……」


 宇佐見は5メートルほど距離をとって、詠唱を開始する。


「……! 二重詠唱か」


 氷魔法第一番の二『メガ・ブレス』と風魔法第一番『ブレス』を混合させる。


 そして、それは吹雪となってクロセルを襲う。


「効かねぇよ、ンなもん!」


 だが、クロセルは物ともしない。


「ハッ、相手が悪かったなぁ? 俺は、センスの相性上、氷には耐性があるんだよ」


 その様子を見た宇佐見は、素早く次の詠唱に移る。


 風魔法第六番の二『メガ・ブレイド』の詠唱だ。


「ハッ、詠唱スピードはそこまで速くねぇみてぇだな」


 クロセルは詠唱を始める。そして、宇佐見が詠唱を終える前に完了させる。


「喰らいな」


 氷魔法第六番の二『メガ・スピア』。


 氷で形作られた槍状の物が、宇佐見に向かって飛ぶ。


「!」


 宇佐見は、詠唱を途中で止めて、その攻撃を避ける。


 その刹那、宇佐見は前方から空を切る音が聞こえた。


 クロセルが氷の剣を投げていたのだ。


 宇佐見は素早く反応し、頭への直撃を免れたが、頬を掠めた。


「くっ……!」


 すぐに自身の氷魔法で凍結を抑制し、白魔術で傷口の治癒を試みる。


「ハッ、いちいち、ンな事やってたらキリねぇぜ」


 クロセルの手にはすでに氷の剣が握られていた。新しく形成したようだ。


「死ね!」


 クロセルの投げた剣は、宇佐見を直撃。


 宇佐見はその場に崩れ落ちた。



 ように見えた。



「!!?」


 気が付くと倒れている宇佐見の姿は無く、そこから少しずれた所に宇佐見は立っていた。


「……あまり使いたくなかったんだけどね」


 紅い双眸そうぼう。先ほどまで黒かった宇佐見の眼は、紅く染まっていた。


 それは、魔眼の一種だった。


「……ハッ、『幻惑のまなこ』か。そりゃ、禁じられた魔眼のはずだぜ?」


「知ってるの?」


 宇佐見は、少し驚く。


「氷魔法のセンスを持つ者が所有者になることが出来、赤魔術と同様の力を得る。だが、そのリスクも多々――」


 クロセルは宇佐見に向き直る。



「てめぇ、何を失った?」



 宇佐見は黙り込む。


 この『悪魔』、かなりこの魔眼に詳しい。


「ハッ、俺がその魔眼に詳しいのは何故か、って訊きたげだなぁ?」


 クロセルは、眼帯をしていない方の眼を閉じる。



「俺も『幻惑の眼』の所有者だからだ」



 再び開いた眼の色は、真紅となっていた。






「よーこ、と呼ばれていましたね」


「そうだが?」


「この城の構造を熟知し、僕の名前を知っているとは、貴女は何者です?」


 一瞬、『悪魔』の関係者かと疑う。


「はっはっはっ、なぁに、そんなことはないさ。ワタシは『悪魔』ではないよ」


「!」


 マルティムは仰天する。


 思考が読まれている。


「心の眼、とでも言えば良いか。ワタシは全てを見透かす能力があるのさ」


「……それが、貴女個人の能力、ということですか」


「いや、違うさ」


 自分の考えをきっぱり否定されるマルティム。


「これは所謂いわゆる、神通力というものでな。ワタシの種族では、力を付ければ誰でも出来るようになるのさ」


「『種族』?」


「ああそうだ、ワタシは『人間』ではない」


 次の瞬間、よーこの体から尾が生える。


 その数、九。



「ワタシの名前は山中 妖狐(やまなか ようこ)。ただの化け狐さ」



「『妖怪』ですか……」


 マルティムは、尾の数に驚いていた。


 確か、狐霊はその魔力の強大さに乗じて尾が増える。


「魔力ではなく、妖力だがね」


 そして、上限は九つ。


 つまり、ここにいるのは紛れもなく最強である九尾の狐だ。


「まぁ、正確に言えばワタシの位は『天狐』と言うよ。尾は、九つが上限だから見た目は変わらんが、一応、最高位だ」


「…………」


 マルティムは、自身の考えていることをいちいち読まれて困惑する。


「む? 少し困るか?」


 かなりだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ