【第二十三話】昼食
「やっぱ、鯖は良い。ビタミンB2、D、Eやタウリンとかが多いし、何よりもイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸が豊富だ。しかも、栄養的に優れた上に、この脂肪の付き具合とこの味は………」
「また出たよ。魚正による魚評価が」
トモダチが、飽き飽きしたような口調で言う。
僕も色々言いたいとこだが、IPAとDHAを正式名称で言うところが彼らしい。
今は昼食の時間。この学校には食堂があり、ほとんど全員がここで食べる。
ちなみに、当たり前だが、男子達と女子達でそれぞれ固まって食べてる。うん。
少し、女子達の方に耳を傾けてみる。
「見てみて! これ、かわいくない?」
「何これ?」
「わたしの作った藁人形」
「ヒナ、趣味悪い」
物騒な事が聞こえた。
「でもな、やっぱ鮮度が落ちやすいのが残念だ。塩焼きでも味噌煮でも良いけど、これは生も美味いんだよ」
ちなみに、こっちの光景はいつものことだ。ほとんど誰も聞いちゃいない。
そもそもな話、和食メニューを頼んでいる人自体、彼とハク君と初見君くらいしかいない。女子の方は知らないが。
「おい、秀。教室に戻ってトランプやらねぇ?」
トモダチが尋ねてきた。
「まだ食べ終わってないし」
「そういえばさ、なんかチップみたいなの置いてあるけど、アレ何だ?」
今度は篭が訊く。すると、トモダチがすぐさま答える。
「あれは、『ポーカー』と『ブラックジャック』用の賭けチップだ。お前がいない時に買った」
「あれ? 秀。お前、そういうのは本物を賭けるのがどうのこうのとか言ってなかったっけ?」
「どうだったかね………」
面倒なことを思い出させるな。あの時の麻央さんの顔が浮かぶじゃないか。
「おい、秀。何か変な顔してるぞ」
「うっさい」
あれ、デジャヴ?
僕が食べ終わった後、教室に戻って3人でトランプをした。
ちなみに、くじ引きBOXから引いた紙に書かれていたのは『七並べ』。
言うまでも無いが、いつも通りのロック戦法で、完膚無きまでに2人を叩き潰した。