【第十七話】くじ引きBOX 2
『ポーカー』。
あんまり説明しなくても大体わかると思うが、あえて説明するのならば、カードで役を作って強弱を競うゲームである。
ん? 説明が簡単すぎる?
仕方ないだろう。ポーカーに関しては、種類によって根本的なルールが違ってくるため、全部に共通するルールといったら、これくらいしかない。
テキサス・ホールデムとか、セブンカード・スタッドとか、ローポーカーとか色々あるけど、今回は日本で一般的に使用されていると思われるクローズド・ポーカーのルールに、自分達で色々補整して遊ぶことになった。
「ショーダウンだ!」
トモダチが叫ぶ。ちなみにショーダウンとは、手札公開のことである。
「『3カード』だ!」
トモダチの手札には10が3枚ある。
「フン、甘いなトモダチ。『ストレート』だ」
僕は手札を広げる。6~10までが揃っている。
「えへへ~、あたしは『フラッシュ』だよ」
麻央さんの手札は、綺麗にクラブに染まっていた。
「…………『フルハウス』」
筧君の手札は3が3枚とKが2枚あった。
「……うげ、また筧の勝ちかよ」
全員の賭けたチップが筧君に流れる。
ぶっちゃけた話をすると、さっきから筧君ばかり勝ってる。
僕と麻央さんは、そこそこゲームから降りていたからまだ大丈夫なものの、トモダチは役が弱かろうと勝負に出るため、かなりボロボロだった。
ん? そんなに勝てないんなら、運命改変でもすればいいって?
残念だが、僕は普通の日常の中では、『能力』は使わないことにしている。そもそも、勝負の世界においてイカサマを使うのも気が乗らない。
そんなわけで、次の回が始まる。
全員がカードを5枚引く。本当は、ディーラーを決めてその人がカードを配るのだけど、面倒なので決めてない。
ちなみに、今回のルールでは、ジョーカー入りの53枚のカードで、最初に全員に得点を200点持たせ、7回目の勝負が終わるか、得点が無くなった者が出たとき、その時点で得点が一番高い人が勝者ということになっている。
現在4回目終了で、筧君が560点、麻央さんが125点、僕が100点で、トモダチは15点で瀕死寸前。
どう考えても、勝敗を覆らせるわけねぇ。
トモダチが頑張る、っていうのが残された手だが、あいつが筧君に勝てるわけない。あいつが得意なのは、『大富豪』だけだ。
「おい、秀。俺が勝てないと思ってないか?」
どうやらトモダチもこの状況を察しているようだ。
「当たり前だろ。筧君が強すぎる」
「ふん。お前、俺が『大富豪』で一番得意な戦法知ってるよな?」
ショーダウンの時が来た。
「革命だぜ!」
フォーカード。フォー・オブ・ア・カインドが正式名称だが、日本ではそう呼ばれる。
ジョーカーこそ入っているが、トモダチの手札には5のフォーカードが成立していた。
流石にこれは驚いた。この土壇場で出すとは、コイツの執念深さのようなものが伺える。これなら、筧君も手が出な――
「…………『ロイヤルストレートフラッシュ』」
空気が凍った。
マジかよ。
ジョーカーなぞ使っていないスペードの10、J、Q、K、Aが場に居座っていた。
思い返してみる。
確か、筧君は手札交換をしていなかった。ということは……
53枚のカードからランダムに5枚選ぶ事象は、53C5=2869685通り。そのうち4通りなわけだら、大体72万分の1の確立の奇跡である。ちなみに電卓で計算しているので、僕の暗算が凄まじいとかそういうわけではないので、ご心配なく。
トモダチは固まっている。こいつからしてみれば、勝利を確信していた矢先にコレだ。物凄い衝撃を受けたに違いない。
そして、この瞬間、トモダチは得点を全賭けしてたので、ゲーム終了。筧君の勝利だ。
今回のゲームで学んだことがある。
筧君がいる時は、『ポーカー』は止そう。