〜管理者との邂逅〜
ーー殺す?はい?
突然の展開から突然の展開でもう
本当に降参である。驚きよりもはや呆れに近い。
返す言葉が見つからず無言でいると
相変わらず姿の見えない〝管理者″が、
「あれ?騒がないんだね〜それとも
聞いてなかった?もう一回言うけどころーー」
「いや聞いてた!あまりの展開について
行けず、言葉を失っていたよ…」
『殺す』この単語をまた聞くのは気分が悪い。
思わず遮ってしまったが精神衛生上、正解だと思う。
「まぁそれもそうだよね〜!おーけさっきはばーっと言っちゃったから順番に説明するよ〜!とは
言ってもこの世界での制約があるから言えない事もあるけどね。」
間延びした声が引き続き耳に入る。
俺は無言で頷き、それを確認したのか
管理者が切り出す。
「選定の儀についてまずは話すよ〜通常の選定の儀は君も知っている女神が行なっている。君のお友達の儀は女神が今頃、終えているはずさ!」
それを聞いて安心した。みんなは無事、
儀を受けられていると言う事だろう。
しかし通常の儀という事は今、俺の現状は
やはり通常ではないんだろうね…
「お察しの通り、君の場合は違う。女神ではなく
〝別の世界の者″が何らかの理由で介入している。
〝別者″に関して、僕はこれ以上の
説明は出来ない。本当ごめんね〜
…制約の所為で肝心な時に役に立たないね〜」
姿は見えないがやれやれと首を振っていそうである。ごめん何だかスケールの大きい話っぽくてさっぱりだ。
「今は分からなくていいよ〜。続けるけどResetと言うのは中断された儀がそのまま
他の人間にリセットされた状態で行われる事から
そう呼んでるんだよ〜
通常の儀はまず中断なんかされないし
対象者が魔力を送り、その魔力で女神と半契約状態で行われるから同じ儀に他の人間を介入させる事なんて出来ないからね〜」
こちらの様子を察し、管理者は言った。
なるほど。管理者の説明は辻褄が合う。
現に椅子から出た水晶から俺達は魔力を送り、
各自、選定の儀に入っていた。
魔力は指紋と同様に人それぞれ魔力の質は違うのだ。
それで各自の魔力から判別し、
その人だけの儀を女神様が行なってくれるという訳か。
しかしまだ疑問が残る。
「〝別者″については現実味もないし判断材料も少な過ぎてピンと来ないから取り敢えず置いとく。
それよりそう言えばさっき
〝他の子達も見習って欲しい″って言ってたが
俺の他にもリセットを受けた人間が居るって事なのか!?」
実際は一瞬の沈黙だっただろうが、俺には
とても長い沈黙に感じた。他にも居るとなると
自分の気の持ちようも違うし希望も湧いてくる。
縋るような気持ちで聞いた。
「居るよ〜!その内、出会うと思う。まぁ僕が運良く、別者の儀に割り込めた時の人間だけだから少ないと思うけど…」
後半になるにつれ声が小さく、
そして悲しげな声色がこちらに届く。
「その他の人は…?」
恐る恐る聞くと答えを用意してたかの様に
すぐ返答があった。
「あそこは精神だけを呼び込むんだけどあの崩壊に呑まれて崩壊の狭間に精神が取り残されるんだ。そうなると肉体と精神は別々になるから肉体は所謂、仮死状態になる。後はどんどん身体の機能が衰え始めて最後には––死ぬ。」
あの崩壊と聞いて、白い空間が崩れ始める
光景を思い出す。自分も狭間に取り残され、
漆黒の闇に意識だけが永久に生き続ける事になっていたかもと思うとこの今の現状を有り難く思えてきた。
「…じゃあ少ないにしても現実に生きて暮らしている人も居るって事だよな!?やっぱり…その…殺したのか?その人達は。そもそもなんで殺さなきゃいけないんだ?」
正直、これから先の具体的な話なんて聞きたくなかったが自分の身に起きた事だし目を背ける訳にはいかない。
「もちろん。中には相手を殺した人も居れば、〝殺された″人も居るよ〜。何故、殺さなきゃいけないのかは今は言えない。ただこれだけは言うけど同じリセットを受けし〝イレギュラー″は二人も存在してはならない。世界が動き出してしまう。」
制約というやつがあるからだろうか。言葉を
選びながら管理者なりに伝えてくれたのは分かった。
かと言って鵜呑み《うの》にしてでは殺します!
とはなれないな…
「動き出す?それに〝殺された″って言ってたが、それはもう一人の〝イレギュラー″が?」
うんうんと頷いているのか暗闇の中で
微かに動くのが見えた。
「大変な事が世界に起きるとだけ言っとく。
そう。君の相方の〝イレギュラー″にも別の形で殺さないといけないって話は伝わっていると思うから。」
管理者の言葉を聞き、また気持ちが重くなったのを感じる。Reset、別者、イレギュラー、、、
ーー考える事は山積みだ…
長くなってしまいました!