〜合流〜
登場人物が増えます!
東地区からだと大通りを真っ直ぐ進めば
中央に位置する教会へ到着だ。
初等部・中等部・高等部は西地区にあるので
教会を過ぎてこの大通りから通っていた。
ーー見慣れた街並みだ。
煉瓦造りの家々と大通りには
店がひしめき合っている。
威勢のいい八百屋のおっちゃんの声が
今日も表通りに響く。反対側に視線を移すと
雑貨屋の看板娘・リリさんがこちらに気付き、
会釈をしてくれた。
少し照れてしまったが軽く会釈を返し、
視線を戻しいつもの通りを見て、
少し気持ちが落ち着いた。
浮き足立っていては上手くいく事も上手くいかない。
ーー何事も冷静に。
よく父さんが言い聞かせてくれた言葉だ。
いつの間にか自分の口癖になって妹にお父さん
みたい!と言われたのを思い出し、苦笑した。
カイの視線を感じ、何事もなかったかの様に
表情を引き締めて前を見ると、
これまた見知った二人組の背中が見えた。
「おーす!なんか久しぶりとは思えないね!」
カイも気付いてた様だ。その声に反応し、二人が振り返る。
「佐乃くんにカイくん!そうだね!
まぁ卒業してまだ一週間しか経ってないからー」
淡い水色の髪を背中で一つにまとめ、すらりとしたスタイルの女の子が振り返ったと同時に言った。
中等部で圧倒的、美人票数を保持していると言っても過言ではないこの少女ーー葉月ユイ。
初等部からの知り合いで母親は国の筆頭魔導師だ。
水系魔法ではこの広い大陸の中でも
トップクラスの使い手らしい。
「うほーいっ!お二人さんおひさー!今日はわくわくでさー全然、寝れなかったよー!あっ昨日、晩ご飯ハンバーグでさっお父さんそれ食べてもうすっごい盛大に咳き込んじゃってさっ!!そんで」
「待て…分かったから
ゆっくり別々に話してくれないか…」
開口と同時にマシンガントークをぶっ放す桃色の髪を肩で切り揃えた小柄な女の子がぶすっと
顔を膨らませてこちらを見た。
マシンガン娘もとい、ルル・愛華だ。
こちらは中等部からの付き合いになる。
中等部にて美人は葉月、可愛いは愛華と
評された二大勢力の一人である。
マシンガンさえなければいいのに…
本人の前で失礼な事を思っていると、
「愛華は相変わらずうるさいな!
だっはははゴフゥゥウ…」
桃色マシンガンの右ブローがカイの
身体を撃ち抜いていた。見た目に反して力が強い。
親父さんは道場の館長で格闘術の師範代である。
まぁそれもありその娘は小さい時から道場で
育った訳だから弱い訳はない。
葉月と俺は同情の目を向けて静かに前を向いた。
ーー前だけを見て進むと決めたんだ悪い
お前との友情はここ…
「おぉい!佐乃!それは人としてないぞ!
人でなし!シスコン!」
心の中で新たな誓いを立てようとした最中に床にこびりつくカイの声が聞こえた。
最後まで言えず、若干イラっとしながら
「葉月、ルルも選定の儀だよね?一緒に行かないか?」
「カイくんは…いや分かったわ行きましょうか」
「あいよー!カイちゃんおっさきー!」
俺はそう言うと二人と共にその場を静かに離れた。
後ろから待ってーー!!聞こえた気がするが
構う事はない。その内、直ぐに追いついて来るはずだ。
ちょっとしたイベントと一人の犠牲を出し、
一行は先を進む。
¨選定の本当の意味を知る事になるとは
この時、思いもしなかった¨