〜失意の最中〜
一瞬、頭が真っ白になった。
自分で言うのもおかしいが
俺は昔から優秀だった。
小さい頃から父さんと稽古してたし、
自主鍛錬もずっと怠ってなかった。
そのお陰もあり、俺に剣で勝てる同年代もおろか
それなりの大人にさえ勝っていた。
初等部でも中等部でもそれは変わらず、
魔法を教わる様になって葉月には劣るがやはり
常に上の実力だった。
中等部には周りから学園から評価され
闘技代表リーダーとなり、
学園内はもちろん近辺の学園まで
知られるようになった。
負けた事もあったが努力もしたし
乗り越えて来た。
過去の結果が俺の自信になり、誇りも持った。
だからResetがあろうが加護がなかろうが、
高等部でも負ける事はないと思っていた。
が、初戦は勝てたものの皇には惨敗。
霜月先生の言葉。
そして評価に達してない者が行くーーX組。
「ははっ…ありかよこんなの…」
今まで培った自尊心はズタボロにされ、
乾いた笑いが出る。
その場から動けないでいる。
人の視線も今は鬱陶しい。
このままどっかで時間を
潰そうかと考えた。逃げだ。
ーー行くだけ行ってみるか。
ダメならダメでその時はその時だ。
決心はついたが身体は重いし気は進まない。
それに比例してゆっくりではあるが
クラスへと向かう。
場所はクラス掲示板に地図が
あったので確認出来た。
どうやらS〜C組は同じ棟の一階なのだが、
X組は隣りの棟の一階だ。
舗装されたタイル張りの道を進むと、
中庭が見えてくる。真ん中の噴水には
子供の天使達?の像ががラッパを持ち、
そこから水が流れている。
素人目に見ても立派な像なのが分かる。
手入れされた色鮮やかな花も
周りに植えられ、貴族の庭園を思わせる。
長椅子も置かれていてちょっとした
休憩場所にもなっている様だ。
この中庭が中心であり、ここを経由すれば
どこの棟にも行ける様になっている。
ーー中庭の花や像も今は鬱陶しい
障害物にしか見えないけどね。
一年生の棟の正面口に入る。
クラスへ向かう生徒がちらほら見受けられた。
俺も中に入ると二人の男子生徒が
こちらを見ている。何か話しながらしきりに
見ているが気の所為だろうか。
こちらが見ていると、
そのまま何処かへ歩き出してしまった。
ーーなんだろう。
気にはなったが、行ってしまったし
こちらも止まった歩みをまた進める
綺麗な白い廊下を歩き、
こちらの棟とあちらの棟を繋ぐ渡り廊下が見え、
その渡り廊下を進む。棟と棟を結ぶ道。
この廊下が境界線に見えた。境界線を渡り、
X組の棟に入ると、あちらは日当たりも
良かったのか分からないが
この棟は全体的に暗く感じる。
少し行くと目の前の廊下は
左右に分かれており左を見ると、
1年X組ーーと教室のドア上にプレートが付いていた。
若干、震える右手で引き戸をスライドさせる。
「遅いぞ〜八雲。お前で全員、勢揃いだな」
教室に入ると、
教壇に寄りかかりながら先程と
同じく眠そうな顔でこちらに
ーー霜月先生が声をかけた。
ーーまじかよ…
体育館での出来事もあり、気まずさと怒りと
恥ずかしさと、、、もう色々と胸の中で渦巻き、
立ち尽くしていると、
「何してんだ。ほら、あっち座りんしゃい」
顎でその席を指すとシッシッと手を振り、
早く座れと促す。
無言でドア側の一番後ろに座る。
8人しかいないクラスだから席も空席ばかりで
クラスメイトはあちこちばらばらに座っている。
一番後ろなので後ろから全体を見渡せた。
反対側の窓際の一番後ろを見ると、
ーーあの灰色の女の子が座っている
「あーんじゃ始めるか」
俺が座ったのを確認し、霜月先生が
話し始めたので一応、視線を戻し前を向く。
眠そうな顔をしている先生だが、
体育館で一瞬だけ見せた気迫は本物だった。
「えーまずは入学おめでとう。」
霜月先生が首に手をやりながらおめでとうと言った。本当におめでとうと思ってるのかは定かではないが。
ーー嫌味か?X組のみんなにとって
この入学式はおめでたい事なんてないのに。
心の中で悪態をついてしまう。
早く終わってくれと思っていたその時に、
「〝いや〜来ちゃったかぁ〜ここに。
残念だったね〜″」
「っ!!!」
その言葉を聞いた瞬間、驚いて立ち上がる。
ーーどういう事だ!!なんで、、、
〝管理者″ーーの言葉を霜月先生が!!
「…どうした八雲。まだホームルームは
終わってないぞー座りな」
「…」
驚きの表情を浮かべる佐乃。
びっくりし過ぎると人間は
案外、何も言えず動けなくなるらしい。
ぎこちない様子で佐乃は座った。
ーー何がなんだかさっぱり分からない…
くそっ!!ごちゃごちゃだ!!
後で絶対にどういう事なのか聞いてやる!
「あー何の話だっけ?あーそうそう。
まぁここは所謂、〝落ちこぼれ″の集まる組って
言われてる」
落ちこぼれーー重い事実がまたのし掛かる。
教室がより一層、静まり返る。
「だけどなそんなの糞食らえって思わないか?
私は思うね。第一、お前ら魔武器もスキルも
こないだ手にしたばかりだろ?
使いこなして戦うなんてまー余程、
出来る奴じゃなきゃ無理だな」
「クラス分けサバイバル始めたのあんただろ」
机に片足を乗せた男子生徒が
苛立ちを露わにした声色で言った。
後ろからしか見えないがオレンジの髪を
剣山のようにした後ろ姿が見える。
外見はさておき、
この太陽頭の言いたい事は分かる。
まるで人ごとの様に言い、貴方達を
擁護してますよとでも暗に言いたげな調子だ。
「まぁあれ学園長のおっちゃんが
決めた入学式だからな〜」
「そんなの知らねーけどよ」
「そういう事だからさ。
ここでゆっくり学んで卒業すればいいさ。
見方を変えれば楽園よ」
「取り敢えず、一旦持ってくる物あるから
ちょっと待っててくれ忘れてたわ」
そう言うと霜月先生はドアを開け、出て行く。
その背中を見て俺も立ち上がる。
ーーどういうことか聞かないと




