〜アスラン魔法学園〜
〜買い出し〜の話に書き忘れていた
名称があったので改稿しました!
すみません!
夜空が僅かに明るくなって来た頃、
隣国の【アスラン共和国】に向かう為、
佐乃は既に起きて自室で準備をしていた。
学園指定の紺色の学ランで入学式を
受けるらしいので着替える。
学園の生徒の証明になるこの制服は
内側に防護術式が刺繍されており、
身を守る防護服にもなる仕様だ。
鏡で制服姿の自分を見る。
ーー我ながらよく似合っている。うん。
調子に乗りました。
誰に言ってるのか、本当に似合ってるのか
疑問は色々とあるが、
次に足元の封筒に目をやり、
その封筒の中のカードを取り出す。
学園への交通手段は送られてきた
この使い切り転移パスを使えば
学院へ転移されるとみたいだ。
このカード型の転移パス、
登録指定された人物が念じると
その人だけが転移する。
尚且つ小型軽量化されている為、
かなり高価な物らしい。
流石、大陸中から学生が
集まるモンスター校なだけはある。
新生活も楽しみなのはもちろん
それに加えて嬉しい可能性がある事だ。
それはーー大陸中から儀を終えた同じ歳の人間が
入学する訳だからここに
〝イレギュラー″が居るかも知れない。
イレギュラーと接触すれば色々分かる事も
あるだろうし協力も出来るかも知れない。
敵意があるイレギュラーについては
危険もあるが、学園内でいきなり
戦闘を仕掛けてくる可能性は極めて低いだろう。
ーー分からない事だらけだが、
可能性も希望もある!自分を信じて突き進む!
改めて決意を固め、じっとその時を待つーー
外もだいぶ明るくなってきた。
時刻を見ると、午前7時になろうとしていた。
そろそろ行こうと思っていると
隣の部屋のドアが開く音がした。
出発前に可愛い妹に挨拶しておこう。
自室のドアを開くと、
妹が階段を下りようとしていた。
「おはよう兄さん!もう行く?」
「おはよう!そろそろ行くよ!」
「はいよー!気を付けてね!
ちゃんとご飯食べる事!
あまり夜更かししない事!
体調管理はしっかりする事!
ちゃんと勉強する事!
そして変な女に捕まらない事!」
「水樹との約束、この五条をしっかり守って
学園生活を謳歌する事!!以上!!
行ってらっしゃいいい!!」
ーー母さんかあんたは…
姿勢正しく声を張り上げている妹を見て、
母さんが生きてたらこんな感じなのかなと
思った。いや…こんな破天荒ではないか…
「あぁ!変な女は置いといて…行ってくるね!
休みの日はちょくちょく戻るからな!」
水樹が頷くのを見て、胸ポケットから
カードを取り出す。
「んじゃ行って来ます!〝転移″」
ーーシュン
「行っちゃったか…少し寂しいなー。
…頑張ってね兄さん。何かあったいつでも帰っておいで!」
さっきまで居た場所を見つめながら
ただ一人の兄に心からのエールを呟く。
ーーー
「おっと!」
初めての転移に声が漏れた。
瞬きの間に妹の姿と景色が消え、
広大なグラウンドへと景色が変わっていた。
周りを見ると、
新入生らしき人が集まっていた。
どうやら転移先は、
学園のグラウンド指定だったようだ。
ーーだよな。建物の中にいきなり大人数が
転移されたら危ないもんな。
心の中で勝手に解釈していると、
「よっしゃーー!!
どちら様?俺様?カイ様ーー!!
到着ぅう!!いやっふーー!!
学園!美少女!カマーン!!」
周囲の目を一切、気にしておらず我が道をゆく、
両手を空高く上げ、
馬鹿でかい声で叫ぶ男が少し後ろに見えた。
彼は入学式でいつも以上にテンションゲージが
上が…いやゲージが振り切り過ぎて
壊れてしまったようだ。
ーー馬鹿だ馬鹿だと
思ってはいたけどこれ程とは…
早速、周りの人間の目の色が変わる。
こいつは関わってはいけない人種だと判断したようだ。
「おい、あれカイ・ロインじゃないか?」
「カストル学園・闘技代表メンバーの!?」
「あの目つきと赤髪は間違いない。
〝紅の暴人″カイ・ロインだ。
中等部時代、あいつの学園に闘技交流戦で
俺らの学園は惨敗したからな…」
カイを知っている連中が口々に声を上げる。
若干、一名拗らせてる奴が居るが。
そうーー大陸中にいくつもの学園があって
中等部の頃、俺とカイ、そして葉月にルルは
学園内闘技大会で代表メンバーに選ばれ、
他の学園と闘技戦をやっていた過去がある。
近辺の学園とは試合をした事があるので
割と顔を知られている様だ。
「あーーー!!ユイちゃんにルルちゃん!!
会いたかったよぉーー!」
カイの視線の先を見ると、
顔を手で隠す二人が見えた。
「〝水の乙女″の葉月様に
〝破壊女神″ルル様!?」
「ここに入学して良かったぁ〜」
「天使!慈悲!!神様ありがとうございます!!」
カイの声により、素性がバレて二人は
周りの女子生徒と男子生徒の歓声を浴びていた。
「カイくん…これは日頃の仕返しか何かかな?」
「いぇーいいぇーい!!ルルだよー!
みんなよろしくねーん!!」
葉月が眉間に皺を寄せながら言うと
カイの顔が強張るのが見えた。
様子をずっと見てたのが悪いのか
こちらの視線とカイの視線がぶつかる。
「佐乃ー!!何してんだよー!
一緒に入学式行こうぜー!」
ーーあのバカ!
「〝無剣″も居るのか!」
「カストル国・闘技代表リーダー…だと!」
「うわー生で見っちゃった」
周りに居た新入生達が
一歩、二歩とジリジリ下がり始めた。
ーーはぁ…凄く申し訳ない…
カイに近付くと鼻の穴に土をぶち込む。
「がっふぅんっ!!ゴホッ…何すんだよ!」
「お前の所為でちょっとした
騒ぎになっただろうが!!」
「カイくんには後でサンドバ…
練習に付き合って貰いますねー」
「シュッ!シュシュ!戦闘準備よし!」
「オワタ。」
葉月の無表情のリンチ宣言とルルの
シャドーボクシングがトドメとなったのか
つい先程までの生気はもうない。
『アスラン魔法学園・入学式を間も無く
行ないますのでグラウンドを上がり、
右手に見える体育館までお集まり下さい』
「あっ!始まるみたいだから急がないと!
ねっ!行こう!ねっ!」
校内アナウンスが聞こえた瞬間、
カイが必死な形相で後押しするので
それに従う形で体育館へ向かう事になった。




