〜今日という日〜
あの後、カイが泣き喚きながら
追いかけて来たので流石に
可哀想になり宥めて表通りの店で
昼飯をみんなで食べ、帰路についた。
「ただいまー」
見慣れた玄関を開け、
家に居るだろう妹と我が家に帰宅を知らせる。
「おかえりー!疲れたでしょー!
お菓子と飲み物、用意するから居間で寛いでてー」
パタパタと廊下を小走りしながら
朝とは違い、前髪をちょんまげにしている
水樹が言った。
居間に向かい、テーブルの前に座って
一息つくと今日の事を思い出す。
選定の儀に、Reset、別者に
イレギュラー。
考える事が山積みで頭が痛い…
今日の事を思い出しながらもう一度、整理する。
「あっ」
思わず声が漏れた。
イレギュラーについて少し分かった事がある。
整理の儀は大陸中の満15歳の全ての人間が
今日、受ける。つまりイレギュラーは
同じ年齢の人だという事。
そして俺の中断した儀をリセットし、
別の人が受けると管理者は言ってた。
〝別者″の存在自体が
常識に当てはまらないから合ってるか
分からないが順を追って考えると、
俺より後に受けた人間が
イレギュラーの可能性が高い。
ーーやっぱ何事も冷静に、だな。
一つの仮説に過ぎないしまだ分からない
事だらけだけど進むしかない。
「難しい顔してどうしたのー?
顔にシワが出来ちゃうよー!」
妹の接近に全く気付かなかった!
いつの間に!隠密アビリティーを会得したのか!?
「ここあらし過ぎて気付かなかったんでしょー
」
「心の声が聞こえているんですか…」
「何となくそんな顔してたから!」
ニコッと笑い、テーブルに
お菓子と飲み物を置く妹。
ーー全く笑えないんですが…
変な事、考えない様にしよ。
麦茶で喉を潤しながら
心にまた新たな決意を固めた。
「それでどうだったのー?
無事、成功した??」
「あーまぁ大丈夫だったよ」
「ふーんそっか!」
そう言うと妹はお菓子をポリポリと食べ始めた。
妹の事だ。あれこれいつも言う俺が話さないのを
察し、何も聞かなかったのだろう。
「疲れたから少し寝るわー」
「はいよー!夕飯までには起きてねー
今日、兄さんが当番だからね!」
手を挙げ、了解と短く返事をして
リビングを後にした。
階段を登り二階の自室のドアを開け、
ベッドに倒れ込む。
いつも見る天井をぼーっと眺めながら
思考の旅に出る。
ーー同じ年齢で俺より後に儀を受けた
人間だという仮説は出来たが、
どうやってイレギュラーを見つけるかだよな…
しかも大陸中ときてる。
確か…相手も俺と同様に話しを聞いてる筈と
管理者は言ってたな。
その人は殺さなければならないと
聞いてどう思ったんだろう。
そして敵意を持っているのだろうか。
寝返りを打ち、壁を見る。
「せめて同じ立場の
〝イレギュラー″が近くに居ればな…」
その呟きを最後に佐乃は目を閉じ、
襲ってくる睡魔に意識を落とした。




