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Reset−出来損ない達の冒険−  作者: 狼少年
第一章・始動
12/24

〜夜光〜

魔力を右手に集め、大水晶へと渡す。

ぐんぐん引っ張り込まれる様な感覚が襲う。

予想以上に魔力を消費するみたいだな。

魔力を欲している大水晶に身を任せ、

魔力を流し続ける。


『ーー』


ーーなんだ?誰だ!


『ーーーー光!!』


突如として声が聞こえた。

誰だかは分からない。でも不思議と気にならない。

紫色の輝きが増す毎に俺の鼓動も強くなる。

魔力が減り、疲労するはずなのだが力が湧いてくる。


ーーお前なんだろう。


自分でも無意識に。何故だか分からないが

気付いたらそう言っていた。

まるで分かっている自分と何も分かってない

自分が二人いるみたいな錯覚さっかくおちいる。

大水晶の輝きが最高潮に達した時、

錯覚も不安もかき消えて、血肉が震え、

高鳴る鼓動と共にえた。


「〝夜光やこう″!!」


考えるより早く、思うより早く、

夜光という言葉がつむぎ出される。


『ーーーー!!』


ガラスが割れる様な音を放ち、

風が吹き荒れ、亀裂が球体を走り抜ける。


「きゃっ!!」


突然の音と風に葉月の短い悲鳴が後ろから聞こえた。

直後、割れ目から光が漏れた。

真っ黒な世界を一瞬で真っ白に塗り替える様な

強い、温かい光が辺りを包む。


「うおっ!!何も見えねー!!」


「きゃーー目が取れるぅ!!」


カイとルルの慌てた声がするが

今はどうでもいい。

光が集まり、一振りの刀が姿を現わす。

黒塗りの鞘には先端から鍔にかけて

一筋の白い線が伸びている。

東洋から伝わったとされる片刃かたはの剣だ。


「素晴らしい…流石、ーーー。」


祭司の呟きは誰にも届く事はなかった。


夜光を手に取るとあまりの軽さに驚いたが

その軽さとは裏腹に力強さを感じる。

脈打つ刀を鞘から抜き、握ってみると

しっかり手に馴染んだ。片刃の刃は美しく、

きめ細かな金属特有の光を放っていた。

まじまじと見つめていると、


「おめでとうございます!

無事、終わったみたいですね。

それでは錬成は完了です。」


「あっ!ありがとうございました!」


司祭の声がして我に返り、慌てて言った。


「おっしゃー!これで選定の儀、武器錬成

終わりだぜー!しかし佐乃の武器なんか凄かったな!」


「佐乃くんが名前を叫んだのもびっくりしたよー」


「いや、ごめん!気付いたら叫んでたんだ!」


「無事にみんな終わって良かったな〜ん!」


あれから司祭に別れを告げ、

広間の石造りの階段を登りながらカイが

俺を見て言った。

あの感覚が忘れられない。

さっきまで握っていた右手が今だに熱い。


「そう言えば、この武器どうしよ…持ち運び

面倒くさいなぁ…」

カイが二極を右手に持ちながら言った。


「カイくん聞いてなかったの??

武器を出す時も戻す時も名前を呼べば

出し入れ出来るって最後に祭司様、

言ってたじゃない!」


「あー道理でみんな持ってない訳だ!てへ☆

「〝鉄拳″」ーーぶっふぉん!!!」


可愛いくない舌出しにルルの拳が唸りを上げ、

カイの左ボディーに突き刺さる。

一日にルルのボディーブローを

左右コンプリートするとは…震える…


「カイくん…どんまい!」


階段の壁に死体よろしく事切れているカイと

傍らの二極を尻目に葉月はまた階段を登り始める。


ーー俺にはどうする事も出来ない…南無!


階段を登り終えると見覚えのある、

木製の長椅子がずらりと並び、

横には祭壇と白い十字架が見えた。


祭壇から視線を前に向けると、

案内役の人当たりの良いシスターが

こちらに向かって来ていた。


「お疲れ様でした!出口までご案内しますね!」


大して迷う様な構造でもないのに

わざわざ出迎えてくれた。

赤い絨毯を歩き、出口に辿り着く。


「わざわざすみません。ありがとうございました!」


「「ありがとうございましたー!」」


シスターにみんなで感謝の言葉を伝え、

一礼すると笑顔で返してくれた。

それを確認し、教会のドアを開けた。


外の眩しさに眉間にしわが寄る。

入る時は下の方にあった太陽が

今では高く昇っていた。


「おーい!待ってくれよぉー!!」


ドアから出て数メートル、教会から歩いた時に

後ろからカイの悲痛な叫びが聞こえた。


「馬鹿なっ!!私が仕留めた筈よっ!」


ルルが驚愕きょうがくした顔を後ろに向ける。

こちらとしては突然のまともな

喋り方にもびっくりなんだが…


「カイくんの死体が動き出したんだわ!

逃げるわよ!!」


珍しく悪ノリした葉月が

今の言葉を合図に

陸上選手ばりのフォームで走り出す。


「ぎゃーーー!待ってぇー!ユイー!」


幽霊系が苦手なユイは口を

パクパクさせながら慌てて走り出す。


俺も悪ノリに乗るかなーー


笑みを浮かべながら足に力を込め、

地面を蹴り出す。行き先は決まってないけど

走り出したら止まらない。


ーーその時、教会の窓から四人を…

いや黒髪の子の背中を見つめる人影があった。


『イレギュラー……』


心地の良い晴空に似つかわしくない

その人影から消え入りそうな呟きが漏れていた。

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