〜能力発現〜
カイ達から視線を外し、周囲を見ると
儀の前から何も変わっておらず、
前を見ると一つだけ違うのは
壇上の大水晶の前に人が集まっている。
武器錬成に移ったみたいだ。
「いやー何を言い出すかと思ったら
ただいまって…大した時間も経ってないのに。」
カイが怪訝な顔をしながら言った。
ーー俺にとっては旅から帰って来た気分だ。
横で怪訝な顔をしていたカイが、はっとしたかと
思うと確信を得た顔に変わり、
「さては…女神様の美しさに見惚れすぎて
頭がボケてるんだろう!まぁ分かるぞ!
あんな美しい方、見た事ない!」
盛大な勘違いをしているが、あたかも自分が
正解を当てましたみたいな顔がイラっとする。
そもそも女神様に会っていない。少し羨ましい。
訂正しようとした時、
水色の髪が勢いよく旋回し、俺の顔に直撃する。
「……っ!!」
「佐乃くん…女神様に見惚れてたんだほぉー。」
「佐乃ちゃんタイプ、女神様なんだ〜!」
まだ何も言ってないのにこれである。
しかしという事は三人共、
女神様の儀をちゃんと受けた様だ。
「いや寝ぼけてたみたいだ…
そう言えばアビリティーはどんなのだった?」
「よくぞ!聞いてくれた!」
待ってましたとばかりにカイの声が響く。
自信ありげな顔をしているのを見ると、
いい能力だったのだろうか。
「〝神能″持ちの俺が今日から最強だ!
俺のアビリティーは〝炎神の怒り″と〝増幅″だ!
炎の加護が俺についてる限り、俺が最強だ!」
いつもの三倍の声量で赤髪のチン◯ラが
高笑いしながら今日一のドヤ顔を披露した。
なるほど確かに強そうだ。
「私は〝水神の恵み″と〝魔力吸収″ね。
水魔法を使う魔導師の私にはぴったりよ!」
「なっ!葉月ちゃんも〝神能″持ちかよ!
俺だけだと思ったのに!」
「ごめんねー私も発現しちゃった!」
驚くカイに葉月が片目を瞑って言った。
それを見て胸を抑えながらカイが倒れ込むのが見えた。
「ユイもカイちゃんもやるね〜!でも私もね…
〝闘神の練気″と〝剛拳″を発現したよー!」
ルルが正拳突きの構えと共に言った。
一見、小柄でか弱い美少女に見えるが、
構えは力強く身体から目に見える程の練気が立ち上る。
「三人共、凄いな…」
素直に心から感心の声が漏れた。
しかも初めから二つも持っている。
ーー俺は能力不明で女神の加護もない…
良くない事だと思ってても
黒い感情が胸を支配するのが分かる。
「お前はどうだったんだ?うん?
お兄さんに言ってごらんなさい!」
葉月やルルもこちらを見て、言葉を待っている。
ーー〝あの事″を言うべきなのか。
管理者、別者、Reset。
とてもじゃないがまともに話せる自信もない。
しかも能力不明で加護がない。
ーー出来損ない。
自然と拳に力が入る。
「あ…それなんだが…能りょーー」
「あっ!錬成の順番来たぞ!話は後だ!」
能力はよく分からないんだ、と言う前に
カイの言葉が遮る。
それに釣られ、みんな前を向いた。
ーー気まずい思いをしなくて済んだ…
情けないが安堵してしまった自分がいる。
カイに救われた。
大水晶へ近付く三人の後ろから
心の中でカイに感謝し、歩き出す。




