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プロローグ

  夜鳥やどり鳴子めいこは世間的に見て、少々やんちゃな部分もあるが、ごく一般的な東京在住の女子高生だ。俗に言う帰宅部であり、趣味といえば神保町で古書漁りや秋葉原でライトノベル漁りなと、友人からは専ら「変人文学少女」と呼ばれるが、本人は気にすることもなく、陽気な性格とそこそこの可愛さも相まって、クラスでは男女問わずそれなりに人気がある。

  そんな夜鳥が今何をしているかと言うと、いつも通りに帰り道に馴染みの古書店で、見た目からして、彼女の祖母の歳はあろう店主と楽しそうに言葉を交わしている。

  もしそれに耳を傾ける人がそこに居たら、間違いなくその会話の内容に驚くであろうが、会話する両者はその様なヘマをしでかす様な年の取り方をしてはいまい。

  そうしている内に、時計の時針が真下に差し、空模様も橙色に染まり始めるのを見て、夜鳥は深くお辞儀をし、店主別れを告げた。

  「それではくう様、私はこれで。」

  「あいよ、また遊びにいらっしゃいな、ぬえちゃん。」

  何やら愛称だと思われる、両者の名を知る物ならまず呼ぶことはないはずの「名」で呼び合う二人は、一方は歳不相応の、一方は何処か貫禄にも似た、穏やかの笑顔で会釈した後、夜鳥は帰路に就く…はずだった。

  いつも通りに東京の人海に紛れ、誰にも見られず裏路地に入ったところ、忽然と足元が光りだす。そこには西洋にて魔法陣と呼ばれる物に近い、二重の円の中に幾何学の模様と未知な文字が描かれた「陣」があった。普通の人間ならばまず反応すらできないであろうが、夜鳥にしてみれば、軽く足は蹴ればその陣のテリトリーから脱せるが、そこから感じる文字通りの「神性」に気付き、ふっと溜息をつく。

  次の瞬間、夜鳥の目に映るのは、どこまでもが真っ白な世界と、真っ白ワンピースを着こむ、美しく、どことなく神々しい女性が一人、いいえ、夜鳥の目には、間違いなく、「一柱」がそこ立っている。

  「異界の子、夜鳥鳴子よ。」女性は口を開き、透き通った声で夜鳥に告げる「妾は汝の世で言う異世界に住まう神、豊穣の女神「ハイディリア」である。我が世界は今危機に瀕している、今から汝に力を授かり、勇者として妾の世界に召喚する。」

  「危機って、どうせあんた等神々が暇を持て余しただけでしょに?」

  まるですべてを見通しているかの如く、呆れた顔で出した夜鳥の返答に、女神「ハイディリア」はただただ驚くばかりだ。。

  「ななななな、なぜ君がそれをしってるのじゃ!」

  「あ~あ、やっぱ猫かぶっていたか。まったく最近の神は本当にだらしないな。」

  「なっ、なにその反応と態度は、お前は一体なんじゃ!」

 慌てふためく女神を見て、夜鳥は笑いながら、己の正体を口にする。

  「私は鵺、平安の大妖怪、鵺様だ!」そう言うと、夜鳥の周りに黒雲が立ちこもり、気付けばそこには猿の顔、虎の四肢、そして蛇の尻尾を持ち、象の如く大きさの獣が立っていた。

 それ見た豊穣の女神「ハイディリア」は、間違いなく、この世に誕生して初めて、立ったまま白目をむき、気絶する。

  「やれやれ…」と、またしても溜息をする夜鳥鳴子、もとい鵺であった。

 その後、再び人型に戻った夜鳥は、「どうぜ暇だし、あんた等の道楽に乗ってやるよ。」と、正気になったハイディリアに提案したところ、何故か態度がやたらと低くなってるハイディリアが即座に了承した。

 お詫びに両世界を自由に行き来する能力と、もう一つ、異世界に居る時限定で使える能力を夜鳥に与えると約束した。

  聞けばハイディリアは神になってからまだ五百年たったばっかりで、ルーキー時代は地球の神々にかなりお世話になっていたとの話た。

  夜鳥は悪名高い大妖怪であると同時に、同じく大妖怪でありながら、天津神の血筋である天邪鬼の莫逆の友として、日本の神々とはよい関係を築いている。

 その話は意外にも有名で、ハイディリアも知っていたらしい。

 そんな夜鳥だからこそ、最近神々の間に、お互いの世界の人間を転移、転生しあって、それをリアルドラマを見るように観察するのが流行っているのは知っていた。

  ハイディリア曰く、日本人、とくにラノベやネット小説を愛読している系のオタクなどは、俗に言うファンタジー系の世界への転移とは相性がいいらしいから、見た目も頭もよさそうな夜鳥を選らんたらしい。地球の転移管理の神に問い合わせたところ、すんなり許可出したが、よく思い出せば、その担当がなんだか笑いを堪えていた様にも感じた。

  「わかった、次に高天原に行く時にでも月読命様に聞いてみるわ。それと、さっき言ったこっち限定で使えるスキルなんだが…」と、欲しい能力を伝えたところ、「これはまたすごい物を」と、苦笑いで返された。

  暫くして「創造神に問い合わせたところ、加護スキルとして作って貰いました、ついでに転移者特典の言語習得と鑑定スキルも」とハイディリアが告げると、どやらゲーム見たくステータスが数字化できる世界だとわかり、夜鳥は早速自分を鑑定しることにした。

  ――――――――――――――――――――――――

 名前:夜鳥やどり鳴子めいこ

 LV:318

 年齢:千年前後

 種族:鵺(唯一個体)

 基礎能力(括弧内は人化時):

 HP:5180/5180  MP:4500/4500

 筋力:268(108) 魔力:439 耐久:259(159)

 抵抗:461 敏捷:525(225) 器用:96(196)

 受動スキル:

 正体不明LV0   思念体LV9  格闘技LV6

 恐怖の象徴LV∞  暗視LV10  神性LV1

 起動スキル:                     

 人化LV0    妖獣化LV0  鵺の鳴き声LV0

 神界転移LV0  雷術LV7               

 加護スキル(起動):                 

 限定異界転移LV0  鑑定LV10 百鬼変化LV0

  ――――――――――――――――――――――――

  ハイディリアの説明によると、スキルのレベルは最高で10、レベル0は成長することのできない特殊スキル、レベル∞は特定の条件下で特殊スキル化した通常スキルらしい。

  鵺のスキルで例えると、恐怖の象徴は元々存在しているだけで人に威圧感を与える人物や魔物が持つものだが、鵺はもとより人の恐怖心から産れた「怪異」のために、特殊スキルになった。

 そして一般的な成年人でなら、基礎能力は大体30前後に対して、大妖怪らしく叩き出した超強力ステータスは流石の女神ハイディリアも驚愕した。

  尚夜鳥が要求した特殊な加護はというと、百鬼変化と言う、他の妖怪へ変化したり、力を借りたりすることの出来るものであった、本人曰く「異世界で百鬼夜行起こしてみたい」とのことである。

  「よし、んじゃいって来るね、ハイディリアちゃん!」と夜鳥が転移の準備を整え、別れを告げると、「行ってらっしゃい、暇あったら遊びに来るのじゃ。」と笑顔で送り出すハイディリア。

  色々と説明している内に、すっかり打ち解けた、そんな二人であった。


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