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14.夢のような現実に
その後のことを、大雅は正しく記憶していない。気が付いたときには、兄の葬儀は終わっていた。
墓の前で、大雅は思い出す。あのとき、自分は兄を殺めてしまったのだということを。兄に向かって、確かに槍を突き立てたのだということを。ただしそれが、どうやってやったことなのかは憶えていない。あるいはあれは、夢の中のことなのだと、今も信じようとしている。兄の遺影を見ても、骨を見ても、現実のことではないように感じられていた。
「兄ちゃん」
独りになってしまった。両親も、祖父母も、そして兄も、自分を置いて逝ってしまった。
「兄ちゃん」
思い出すのは、あの日の会話。死に向かおうとする鏡矢の、最期の言葉だった。