0.序章
こんにちは、葵枝燕でございます。
新連載『生屍』、はじめていこうかと思います。
キーワードに「残酷な描写含む」と警告を入れましたが、どこからどこまでが〝残酷〟なのかわかっておりません。とりあえず、入れてみました。一応私自身は、出血を伴う自分の怪我さえまともに見られないほど、血とかが苦手です。そんな私が書いたものなので、〝残酷〟なのかは私が一番わかっていないのかもしれません。
とりあえず、読んでて無理そうだと感じたらその場で読むのをやめること、を読者の皆様に推奨します。
それでは、『生屍』本文へ進んでくださいませ。
この世に未練を残した死者は、生者を喰らう。目が合った生者を喰らおうとする。喰われた生者は彼らと同じ死者になり、喰った死者はそこでようやく本当の死者になれる。
死者はどこにでも存在している。とあるビルの中に、とある学校の中に、とある駅のホームの中に、とある公園の中に――どこにでも存在し、生者と変わらない容姿で居座っている。だから生者は、うろつく死者に気付けない。否、気付くことすらもできない。死者がそれだと気付くのは、目が合ったその瞬間、もしくは、自身の死の瞬間である。死者に見入られその手に捉えられてしまえば、まるでそれは擬態した花蟷螂に捕らえられた哀れな蝶と同じである。
助かる方法は二つ。
一つは、追いかけてくる死者を殺すこと。これは、死者と目が合った瞬間からその手に捕まる前までの段階で使える手段である。死者は必ず、自らが最初に見た生者を喰らおうとする。それ以外には興味を持たない。そして死者は、目が合った生者を捕食するためならどれほどの時間も惜しまない。追いかけ、待ち伏せ、あらゆる手段を用いて捉える。道連れに選ばれた生者は、死者の手に捉えられる前に、その死者を殺さなければ死者になる。つまり、目が合っただけの段階で死者を殺せば、生者は生き残ることが可能となる。
もう一つは、二十四時間以内に身体の一部を失うこと。これは、死者の手に捕まってしまった後に使える手段である。二十四時間以内とは、道連れに選ばれた生者が完全な死者になってしまうまでの時間制限だ。その間に身体の一部を差し出さなければ死者になる。
助かりたいのなら、大切な人であれ殺してしまうこと。
助かりたいのなら、自分の身体の一部を失うこと。
昼夜を問わず彷徨する生ける屍に、二択を迫られる生者は――……。