雑談
雑談
「ぐるぐると闇の回る晩だね」
「君のはいつも回ってるぢゃないか」
「ちがいない。回っているよ。昼も夜も。果てがなくて僕は疲れっちまうんだ」
「ああご苦労様だねえ」
「アマデウス」
「が、何だい」
「観たことある?アカデミー賞も獲ったやつ」
「モーツァルト?」
「うん」
「歩く生殖器な。あいつ、ピアノの横か下が女と寝る定位置だろ」
「才能とね、そのへんのゆるゆるは別口ぽいな」
「…サリエリが哀れ」
「非凡と凡?」
「うん」
「そこいらの采配は、ま。天の酷たるところで」
「西表島に行ったって?」
「昆虫採集にね。あの島にしかいない虫がいるんだ」
「忙しいだろうに。仕事人間の君によくそんな暇がある」
「変人だから。ほら、アスペルガーだし。くく、」
「それは僕もだろう。どだい発達障害なんて抱えてると、生きるのにはまあちょいと苦労する」
「少なからず特権もあるだろう?」
「僕に才があると言うなら君にもあるだろう。分野は違えど」
「だが君と僕では非凡と凡だ」
「君が非凡」
「ちがう、君だ。君がモーツァルトだ。天の酷たるところだ」
「ぐるぐると闇の回る晩だね」
「いかにも星はときおりちらつく程度だ。ぐるぐる闇夜。僕は疲れっちまう」
「今日は良い天気ですね」
「何だい、それ」
「そう言いながら死んだ男がいる」
「へえ、羨ましい」
「うん、羨ましいな」
これは自身が発達障害者、アスペルガーである著者の体験に基づくフィクションであり、作中の台詞には著者の自虐が反映されているだけであって他に障害を持つ方に対する差別に基づくものではありません。




