六十四本目
自分の行いの所為だって、知っていた。
でも理解はできていなかった。
こんなにも自分の怒りが湧き上がるなんて。
ずいぶんと浅はかだった、と後から思った。
「姉は退かされ、妹の私は村のためにいいように使われる」
まるで本を読むように言った言葉。
そこに感情というものが入っていたならば、それはきっと怒り。
怒りに任せて、私は村長を燃やした。
神様の力を悪用してまですることじゃない。
でも子供の力ではどうやったって勝てっこない。
相手は棒状の武器を持っている。
すでに一人、殺している。
私の、片割れを。
目の前に広がる、赤い火の塊。
もがくように動き回ってお社にも火が移る。
動けない様子の春樹の手をつかみ、外へ逃げる。
村長はその様子が見えていないのか、反対に部屋の奥へ入っていく。
入れ替わるようにして、外に出た後お社全体が燃えていた。
「あ、あぁ」
呻いて、その場に座り込みそうな春樹。
火が移らないところはこの辺にはない。
そのうち山火事になるだろう。
燃えてしまえ、そう願う。
こんな村、必要ない。
冬華がいないなら。
「・・・・(あれ?)」
自分の思考がおかしい。
だって冬華は、いつも私にきつくあたっていたのに。
ちょっとした気まぐれ程度に、私に構っていたのに?
自分の嫌なことばかり、私に押し付けてきたのに?
どうして、彼女の死を悼んでいるのか。
彼女の仇を取ったのか。
「・・・・(あぁ)」
確かに彼女は表面上悪い風を装っていた。
他の人には絶対に見せない顔、それがあの顔だったのだ。
私のためだけのあの顔の裏には、ちゃんと優しさがあった。
無理矢理自分のふりをさせたり、勉強を教えてくれたり。
あれは身代わりを作るため、という名目の基行われた”教育”だったのではないか?
名前や物も碌に与えられず、字の読み書きも計算も何もできない。
そんな赤子同然な私が、自分で生きていられるように。
それか同情や恐怖だったのかもしれない。
もし彼女が妹ならば、こちらの立場になっていたのだろうから。
「・・・ばーか」
彼女に到底届かない量の声で、そう言ってみた。




