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五十七本目
村長に連れられて家に帰った春樹を見送る。
あぁ、今回もまた始まった。
そんな風に考えていた。
早めに二人に接触しておかないと。
なんて思いもしなかった。
勝手に村を出ようとして、死んでしまえばいい。
そう思うほどに思考を止めていたのだ。
「あー桜花ちゃんじゃん」
あざ笑っている声が上の方から聞こえる。
勿論あの悪魔であることは分かる。
私の名前を知っている人はいないはずだから。
女の双子の片割れは、存在を認めてもらえないから。
「えーこんなところで、一人で、何してるの?」
わざとらしく「一人で」という部分を強調して言った。
腹立たしいとは思うが、逆になぜ飽きないのかとも思う。
毎回同じようなことを言う彼女は、何が楽しいのだろうか。
満面の笑みの彼女の顔を見つめる。
「え、なに。そんなにあたし美人?」
「ぶっさいくだから安心すれば?」
口の悪さが安定してきたのはこの悪魔の所為だ。
責任転嫁をして、結局その日は終わった。




