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五十五本目
その日以降も彼の通学路に現れた。
勿論冬華の格好をして。
だからその分冬華に怒られたり、喧嘩したりもした。
でも理解してほしかった。
そのための言葉もいくらだって吐いた。
「このままじゃ、みんなが死んじゃうの。
だから、村長の息子を説得するのは大事なことなの!」
「だからって、私のふりしなくったっていいじゃない!!」
「で、でも冬華の格好してたから話聞いてくれたの」
「私が悪口言ったみたいになってるから、睨まれているの
そんなことも想像できないの?!」
冬華が全力で怒鳴る。
その言葉のドッヂボールの中、私は嘘をついた。
「私は、冬華に死んでほしくなんてないの!」
私がお社を抜け出せば、冬華は殺される。
そして私は必ず抜け出す。
彼女は必ず、私の所為で死んでしまうのが分かっていたのに。
ううん、知っていたのに。
その言葉を聞いて冬華は首を縦に振ってくれる。
「あんまりひどく言わないでよ?」
「分かった。気を付ける」
その後も彼への悪口は絶えなかった。




