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五十四本目
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「ばっかじゃないの」
その世界での最初の言葉はこれだったと思う。
本気で、心の底から神様を信じていて。
天国なんてものを願っていて。
私の辛い境遇なんて知らないと言わんばかりの顔をしている。
心の中から出てきた言葉だったんだと思う。
何度も繰り返しをしているうちに彼への好意が減っていた。
そんな時だったのかもしれない。
詳しくは覚えていないけれど。
でも心の底では、きっと愛していたのだと思う。
言われた方の春樹はすごく呆気に取られたような顔をしていた。
何を言われたのかわからない、そんな顔。
それもそのはず。
私は冬華の格好をしていたのだから。
「君はこの村の巫女なんだろう?なんでそんな」
「頭悪いあんた達が勘違いしているだけじゃない。
気になったらどうなるかわかってもいないくせに」
一気にそこまでつなげて、呼吸を置く。
「ばっかじゃないの?」
その日2度目の侮辱だった。
その後も何度か別の言葉で罵った記憶がある。
言葉が出るたびに彼は怒った様子を見せてくれた。




