五十二本目
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「あーーーーーーー!」
「な、なんっだよ!脅かすな!」
「ちょっと―お母さんうるさい」
「お墓参りに行きましょ」
「・・・・・誰の、だよ」
「ご先祖様?」
「なぜ疑問形なのさ」
口元に人差し指を当てて、悪戯っ子ぽく微笑む。
それを見て子供たちはブーイングの嵐を巻き起こす。
なんだか平和すぎて、涙が出てきそう。
なんて思いはこっそりしまい込む。
「お母さん?」
あら、いやだ。
ばれているみたい。
この子は鋭いから困る。
でも気づいてもらえるということは、嬉しくもある。
「ちょっと遠くて変なところにあるけど、みんなで行きましょうね?」
「・・・え?みんなって」
車を借りて、山を一つ、二つ越えていく。
森しかない風景を何時間も眺める羽目になる。
子供たちはワイワイとお菓子をつまみながら、楽しくしている。
ミラー越しに確認して、前を見つめなおす。
「さぁ、ついたよ」
見渡す限り、木しか見えないその場所。
墓石なんてみあたらない。
そんな風景に対して、子供たちはやはり怪訝そうな顔をする。
だから説明をしてあげた。
昔、昔の話を。
ここで起きた惨劇と、その結末。
それらは全て先祖の話であることを。
「・・・その”巫女”って言われていた人の血が流れているの?」
「うん、多分」
「多分って・・・」
「そうするとね、おかしいの。”巫女”には力がなかったはずなのに」
「子孫の私たちには力がある」
「まるで、もう一度悲劇を生み出せと言われているかのようですね」
その一言のあと、みんな口を閉ざしてしまった。
もう起きてしまったから、否定ができなかった。
すると、娘が言った。
「違うよ。きっと」
もし、生まれ変わりというものがあったのなら。
記憶も伝承しないだろうか。
そうすればはっきり分かったのに。
でも私には見えてしまった。
息子と娘。
その親友たちの姿にかぶるように立つ、少年たちが。
「もう一度、巡り合うための目印だよ。
本当の幸い、つまり銀河鉄道の夜かな。
あれと同じように最後は離れ離れになるけれど、会いたい。
ジョバンニとカンパネルラも旅が終わってから再会したじゃない。
カンパネルラは死んじゃっていたけれど、会えた。
同じようにまた、どんな形であっても会いたかった。
そんなみんなの願いが形になったんじゃないかな?」
「そうすると、春樹ってやつはどうなるんだよ。あいつだけ敵対してたじゃないか」
「うーん、しらない。死んでから心変わりしたんだじゃない?」
兄妹仲良く会話しているわが子たち。
そんな壮大なまでに適当な推測あっさり立てないでよ。
なんて思うけれど、きっと当たらずとも遠からずと言ったところだろう。
愛おしくて、仕方のないこの光景がいつまでも続いてほしい。
ずっと、永遠なんてありえないけれど。
あの子が願ったように、いつまでもみんなが幸せで。
そうあって欲しいと、心の底から思う。




