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きになるはなし  作者: 雲雀 蓮
天(そら)を目指して
52/70

五十一本目

**



ぼんやりした頭で村を見た。


木の伸びていく風景は、圧巻とでも言えるだろう。



「・・・・はぁ」



お社から出ることを諦めてしまったから、退屈だ。

物質を通り抜けることが可能だから、「出る」のは直ぐにでもできるけど。

そうじゃなくて。



どうせ、外に出たってなにもないから。

何もないって知ってるから。



「これが、遙香の見てた世界、なのかな」



悪魔、と彼女は自称していたが、本当は違う。

煩悩でなければ、悪霊と言うわけでもない。



ただそこに魂が残ってしまった、それだけだ。



何か現世に強い思いがあったわけじゃない。

体から離れることがうまくできなかった。



彼女も彼も、いつか天に昇れるように旅に出た。

でも私は。

別にどこにも行きたくない。

だって、どこに行ったってのけ者扱い。


いままで守ってくれた冬華もいない世界なんて行きたくもない。




「おい、」




うなだれた頭の上から声が掛けられた。

男の子の声。聞いたことある声。



「春樹、?」

「これは、どうなっているんだ?」

「どうもこうもないよ、全部終わっただけ」

「終わった、ってどういうことだ!あいつらはどこに行ったんだ!」



死んだ後も元気な彼。

どうして死んだって感じに。

いやまぁ、出血死なんだろうけど。


死にきれなかったのは、私だけじゃなかったのか。





仕方がないから、私の知っていることは話した。

春樹は死んじゃったこと。

私は自分の命と一緒に”巫女”の力を全て使って”災厄”の働きを止めたこと。

みんなは村の外に逃げていってくれたこと。



「なんだよ、それ・・・意味わかんないこと言うなよ・・・」



理解できなくていい、そう口が言いかけた。

でも理解してもらえなくては、この先どうしようもないだろう。


永遠にも近い時間を、漂わなくてはいけないのだから。



遙香と樹は遠い昔の人間だった。

つまりその分くらいはこの世界にいることになる。

それ以上の時間かもしれない。

気の遠くなるような時間、一人でいることになる。



「お前は、どうするんだよ」

「・・・え?」


「お前は、これからどうするんだ?」



私は、ずっとこの場所で朽ち果てるのを待つつもりだった。

せめて冬華がこの世を去るまでは、と。



「ずっとこんなとこにいるつもりなのか?」



生きていた時と同じように、ずっとここで一人で居ようと。

耐えられると、思っていた。



「あ・・・」



涙がこぼれてきた。

死んじゃったから、もう生理的なことはないと思っていたのに。

ぼろぼろ、と目から落ちていく滴は、実体こそないが重みはあった。



耐え切れるわけない。

みんなと一緒に居られたあの時間があった分、「孤独」の辛さを思い知ったから。

一日も離れていないはずなのに、こんなにも寂しい。



「・・・・その、悪かったな。碌に話も聞かないで、さ。

 でも今度は違う。ちゃんと聞いた。それに考えた。


 お前は虚実を言っていない。

 でも自分に嘘はついている。違うか?」



立って私を見下ろしていた彼は片膝ついて、私に手を差し出した。



「行こう」

「どこに?」

「さぁな。テキトーに」

「行きたくない」

「嘘だ」

「ほんと、だもん」


「僕が一緒に行ってやる。ほら、行くぞ」



もうやだ、こいつ何様だよ。って。

俺様か、なんて思って笑った。


私こんな馬鹿好きだったのか。

私も大概馬鹿だったのか、見る目がなかったんだな、と思った。



「また、みんなに会えるかな?」

「会えるだろ。だって、それがお前にとっての幸福なんだろう?」

「?、うん」



「だったら運命ってやつで叶う。遠い未来かもしれないけれど」



そう言って、春樹はニカっと笑った。







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