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四本目
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「・・・・・・・・・・・」
忘れられない。
いつだってあの時の凄惨な光景が目に浮かぶ。
両親が、近所の人が。
兄弟が、友人たちが。
周りを赤く染めてまわる光景。
荒廃して半分腐った死体が転がっている村。
「もう、つかれたよ」
神様なんていなかった。
悪魔はそばにいてくれたけど。
やっぱり神様も天使も、奇跡もなかったんだ。
「もうやだ・・・!」
何回も何回も同じことを繰り返す。
私は望んでいないのに。
繰り返さなければ、私はこの世界から離れられるのに!
彼が私に好意なんて抱くから。
同情なんてしてしまうから。
冷たくしているのに、嫌なことばかりしているのに。
どうして私に構うの?!
「・・・また、やり直し」
自分の意思とは反した願いを叶えるために命が削られる。
何度やってもなれない感覚におびえてしまう。
まるで体の中を冷たい鉛が通っていくようだ。
「今度こそ、ちゃんと嫌われなきゃ・・・」
もうこれ以上のやり直しは、私が認めない。
これ以上は、私の気が狂ってしまいそうだから。