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きになるはなし  作者: 雲雀 蓮
本当の××××
45/70

四十四本目

**



本当はあの男に復讐をやめてもらうはずだった。

”災厄”の働きさえ止めてしまえば、何とかなるはずだった。


でもダメだった。

春樹が死んでしまった。

”災厄”に殺されてしまった。



あの黒い影は、”災厄”がエネルギーを求めている証。

足りない分を補うために人間をいくらか吸収しているのだ。

効率よく、欠損の少ない人間を優先して。

あの場で人間として完成に近い状態だったのは春樹だ。


色素の少ない咲希ちゃんでも、

色が判別できない明樹君でもなく。

”巫女”であり人の顔が判別できない冬華でも、

”贄”であり痛覚を持っていない私でもなく。


人の話を聞けない、春樹が。



おそらくあの場に春樹が居なければ、冬華が同じ目に遭っていただろう。

血を流していたからだけで逃れられたのかもしれない。



冬華が守ってくれなかったら、あの場で私は大事な片割れを失うところだった。



そういう事が言えてしまう。



「・・・っは、・・・はぁ」



沢山走って、お社まで戻ってきた。

もう一度時間を戻す、それも考えた。

でもそうなるとまだ、黒い影は何も解決しない。

それに世界の歪みはそのままだ。


私は、どうしたらいい。



それがわかっているから走った。

お社にいるであろう、遙香に会いに来たのだ。



「まってたよ、桜花」



久しぶりの様に感じるその声に、どこか安堵した。

彼女と行動が同じになってしまうのは、同じ境遇だからだろう。


彼女は、あの本に会った姉妹。

しかも妹の方だったのだろう。



彼を、取り戻したい気持ちはある。

時間が巻き戻ってくれればと、思わずにはいられない。

でもそれはしてはいけない。


彼の求めていた理想の世界を守ることしかできない。



他人から決めつけられた理不尽な運命。

でもそれで大切な誰かを救えるのなら。

そう、今は思う。

こんな私を命がけで守ってくれるそんな姉を見て思うようになった。

今まで見えなかったものが見えてきた気がする。



「・・うん。私は”贄”として、命をささげるよ」



この村に人は少なくなってしまって、村とは言えなくなった。

きっとみんな村の外へ行くと思う。

でもそれでいい。

この村じゃなくても、どこか遠くの場所で生きていてくれれば。



春樹に謝らないといけない。

神様はこの村にずっと昔からいたのだ。

その力の一端を扱える私か否定してはいけなかったのに。

(分かっていて否定していたけれど)

彼を遠ざける、ただそれだけのために嘘を吐いた。


結局自分の望み通り彼を生かすことはできなかったし。



「遙香、ありがとうね」




私の願いは、いつだってただ一つ。








『ひとりぼっちは嫌だ』ってことだけ。








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