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きになるはなし  作者: 雲雀 蓮
本当の××××
44/70

四十三本目

**



僕らと口論していた春樹の体から、黒いものが頭を出す。

頭と言っても比喩だ。

これのどこが人間の体と対応しているか皆目見当がつかない。

口から何かを吐き出す春樹。


僕らは茫然とその光景を見つめていた。



「ああああああああああああああああああ」



あの男の人の絶叫と、春樹の体から液体がこぼれる音。

ここにはそれしかなかった。

絶叫が更に増した気がするのは、気の所為ではないだろう。

春樹の体は崩れ落ちることなく、黒いものに支えられている。

まるで十字架に張り付けにされたようだった。



「うそ、でしょ」



ぽつり、と咲希はつぶやいて泣いた。

その場の誰も吐かなかったその言葉。

誰もが知っていたことだった。

おそらく春樹以外は。


春樹は人の話を聞くことができない。

彼の欠損はそんな小さなものだったのに。

その小さなものの所為で、彼は命を失うことになった。

僕や咲希のような人間として致命的なものじゃなかったのに。


きっと彼から零れ落ちていく液体は血液なんだろう。

赤じゃない、黒に見えているのは僕だけ。

誰も教えてくれないのは、余りの惨劇に声帯が震えすぎているから。



ぐさ、

ぶちゅ、

ぬちょ、っずり。



ぐしゃ。



彼の体を好き放題貫いて、地面に捨てた。

黒い物体は、僕らを見てすぅっとどこかへ消えた。



「・・・・・・・・・はるき?」



桜花さんが、春樹の体に近づく。

死んだのが信じられないような、そんな顔で。

声が今まで聞いていたものとは違って幼く聞こえた。

ぐちゃぐちゃのそれは、かつての友人だというのに。

僕もそれが春樹だったなんて、信じたくない。



唯一無二の友人が死んでしまったなんて。



「なんで、あんたが真っ先に殺されるの?

 なんで私じゃないの?

 なんで、あんたは」



そこから桜花さんは何も言わなかった。

ただ、ぎゅぅっと握った左手から何か液体がこぼれていた。



「咲希ちゃん、お願い。冬華の治療をしてくれる?」

「え・・・?」

「道具はこのお屋敷にあるはずだから」



なぜ自分でやると言わないのか。

咲希はそんな困惑に包まれていた。

僕も思ったけれど、彼女は他の誰でもない自分にしかできない事をしに行くのだろう。

そうも思った。



「・・・冬華の傍にいて、あげて」



そう言って、お社の方向に駆け出した。

お日様が沈んでいく方角へと行く彼女の背中を、また僕は見つめていただけだった。









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