四十二本目
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なんでだ、なんで!
僕は、この村を、僕の世界を守ろうとしたのに!
どうしてそれを他でもない”巫女”の冬華さんが邪魔をするんだ!
あの女は生きていて、僕を睨みつける。
まるで僕を殺さんばかりの鋭さ。
姉を殺されてその相手を憎むような、そんな目つき。
僕は悪くない。
お前が自分の姉を盾にしたから悪いんだ。
お前が、避けずにいたらこんなことにはならなかったんだ!
僕は悪くないんだ!
「・・・春樹」
気安く僕の名前を呼んで近づいてくる女。
その手には先ほど僕が使ったナイフが握られていた。
「来るな!この人殺し!僕ら全員殺す気なんだ!明樹、咲希逃げろ!」
そう言っても明樹も咲希も動かなかった。
むしろ哀れな生物を見るかのような、目を向けられた。
「春樹、違うよ」
明樹は、ポツリとつぶやいた。
何が違うって言うんだ!
咲希が何度も時間を巻き戻していたのはそいつがみんなを殺したからなんだ。
そいつがいなければこの村は平和なままなんだ。
僕たちを殺してきたのはこいつだ!
何も違うことなんかない!
「桜花さんも時間を巻き戻していたって、聞いていてくれなかったんだね」
誰かが何事か言ったようだけれど、聞こえなかった。
どうせ”贄”なんだ。
今死のうが、後で死のうが一緒じゃないか。
生きていること自体に意味があるわけじゃない。
神様に捧げられて漸く意味がある。
今死ぬギリギリまでにして、お社に持っていけばいい。
そうすれば、みんな大丈夫になるんだ。
こんな誰もいない村じゃなくなる。
僕の世界は永遠に平和なまま、明日を迎える。
神様と一緒に生きる、そんな天国のような世界で僕らは生きるんだ。
もう、何も、酷いことは起こらない。
諸悪の根源であるこいつが、
ぐさっ。
「え・・・?」
いなくなってしまえば。
大丈夫な、はずなんだ。




