四十本目
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夜の足音がする。
辺り一面オレンジ色に染まった村の片隅、というほどに狭くはないか。
彼が居るであろう、場所。
冬華の住んでいる家についた。
彼はきっと冬華を殺そうとしている。
だったら、彼は必ずここに来ているだろう。
その推測は悲しいことに正しかったようだ。
「・・・・おや」
笑顔で私たちを見るその人は、村長にそっくりだった。
それに気付いた咲希ちゃんと明樹君は息をのんだ。
私も少し驚いて息をつめてしまった。
春樹と同じ黒い瞳はずなのに、まるで絵具を全て混ぜ合わせたようなどす黒さ。
白髪交じりの黒髪もどこかくすんだ色をしている。
そして、宵闇に紛れるためのような服も。
どこかに邪悪な何かを感じてしまう。
それはやはり彼が殺人を企んでいるからなのだろうか。
いや、それ以上に恐ろしいことを実行しようとしているからだろうか。
「ダメだろう?子供がこんな遅くまで外で遊んでいては」
村長と同じような発声をして、
村長と同じように立ち振る舞う。
同じようなことを私はしたことがある。
やはり、という思いが駆け巡る。
彼いや彼らは、双子だったのか。
徐々ににじり寄ってくる彼。
顔にほほえみと言うものはついているけれど、それが偽りであることは分かった。
彼の手には武器はない。
でも知っている。
成人男性と子供の力の差を。
「貴男のしていることは、復讐ですか」
「さぁ、お家に帰ろう。送っていこう」
「それほどまでに、この村が憎いですか」
「”贄”はお社にいる約束だろう?さぁ、早く戻ろうね」
「自分の家族も、殺すまでに、この村が憎いですか」
じりじりと、距離が詰められていく。
会話でもして足を止めさせようとしたがだめだ。
かみ合わない会話をしつつ、近づいてきた。
せっかくカマをかけたのに。
否定しないことから、あながち間違っていないことが分かったけれど。
今はその事実なんて必要ない。
どうしよう、じり貧状態だ。
そう思ってまた、足を後ろに運んだ、その時。
「っっ!」
冬華の息を詰める音が聞こえた。
それはまるで痛みに耐えるような、そんな…音。
恐る恐る振り返った。
そこには冬華が痛みを享受している顔があった。




