三十八本目
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さぁ、ラスボス戦だ。
ゲームなら誰かがそう言ってくれるのに。
現実にはラスボスなんていないし、そんなこと言ってくれる仲間もいない。
別にそれが気に入らないわけじゃないけれど、なんだか物寂しい。
世界観が違うって言うのは、こういうことなんだろうか。
現実とゲームは違う。
そう遠まわしに誰かに言われているかのようだ。
ゲームはいくらでもやり直せる。
セーブすれば好きなところから、やろうと思えば最初から。
でも現実はセーブもなければ、ロードもない。
時間を止めることもできない。
難易度はいつだってハード以上。
イージーモードは存在しない。
ノーマルモードすらないのは、ゲームならクソゲーだと思う。
なんて。
人生で一回しかやったことのないゲーム。
外の世界にはいっぱいゲームも本もあるって、誰かが言っていた。
僕ももっとゲームやりたい、そう返したらその人は次の日村からいなくなっていた。
引っ越したとお父さんは言っていたけれど、違う。
僕のわがままを叶えるために村の外へ向かって、森の中に住んでいる獣に襲われたんだ。
あの人がもうこの世にいない。
神様の近くへ行ったのだ。
この村はどこかおかしい。
その原因がはっきりしているのならば、解決しなければならない。
”贄”である桜花さんが、そう言っていた。
でも僕はそれは違うって思う。
この村はおかしくなんてない。
神様が傍に居てくれているんだ。
おかしくなんてなるはずない。
おかしいと感じているみんながおかしいんだよ。
お父さんは悪くない。
人を殺そうとなんてするはずない。
そうか。
桜花さんは僕らのために生贄となるのが嫌なんだ。
だから、あんなことを言うんだ。
確証もない、嘘を吐いてまで人に尽くすのが嫌なんだ。
そうじゃなきゃ、おかしい。
家族の僕のいる前であんなこと言う人、ありえない。
「・・・・こっちみんな、ばか」
ほら。
彼女は僕が嫌いなんだ。
初めて会った時だって、酷いことを言われた。
なんで妹のことを知っていたのか知らないけれど。
でもあんなこと言った人は今まで会ったことない。
みんな僕を庇って、慰めてくれた。
・・・彼女は、とても、酷い人だ。
信じてはいけない。
彼女は僕を殺そうとするかもしれない。
僕のお父さんを殺すかもしれない。
気を許してはいけない。
彼女が後ろに立ったらすぐさま足を止めよう。
後ろから刺されてしまうかもしれない。
いやもっと痛い目に遭わされるかもしれない。
「僕のことを君が見てきたから返しただけだろう」
必然と声が低くなる。
彼女とは仲良くなれそうにない。
いや、なってはいけない。
僕が大切に思っているものすべてを壊しかねない存在だ。
僕の世界の闖入者なのだ。
僕は、僕の世界を守らなくては。




