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きになるはなし  作者: 雲雀 蓮
昔々の出来事
35/70

三十四本目

**



雨が降り出した。

いつもと同じ、パタパタと地面で跳ねるような雨。

これが毎度私たちの脱出の妨害をしてきたことを思い出す。



「咲希?」



心配そうにわたしを見つめる明樹。

きっとわかってしまったのだろう。

土砂災害によって死んだとされた人が出た理由を。

自分も同じように死ぬだろうことも。

いや、とっくに知らせておいたから知ってはいたのか。

この雨は、明樹に理解させてしまったのだ。


確実に死に至る道があるということを。



手が、体が震える。

わたしも、同じだから。

でももっと怖いのは、わたしを庇って明樹が死ぬことだ。

こんな震えなど、止まってしまえ。

じゃないと、明樹に無駄な心配をかけてしまう。



「咲希ちゃん、大丈夫だよ」



”贄”いや、桜花さんが穏やかな顔で慰めてくれる。

それは今まで見てきたような顔じゃなかったから一瞬冬華さんかと思った。

いつも桜花さんは険しい顔をして、この村にいたから。

今思えば、あれは彼女なりに必死だったのだろう。

特に春樹に対しては酷い顔をしていた。

虫けらを見るかのような顔は今でも忘れられない。



そう言えばわたしの作ったループに気付いていたのは、桜花さんなのだろうか。

今までは”巫女”である冬華さんだと思っていた。

だけどそれは、勘違いだったのだろうか。

あの顔はどちらのものだっただろうか。



「桜花さん、は知っていたんですか?」

「・・何を?」

「わたしが時間を巻き戻していたのを」

「え!?あんただけじゃなかったの?!」



驚いた声を上げたのは冬華さんだった。しかも桜花さんを見ながら。

ということはつまり、桜花さんは知っていた。

あの神を否定し、わたしに友好的だったのは桜花さんだったのか。

穏やかな顔をした桜花さんが、また笑う。



「知っていたよ。ずっと見てきた」



そのほほえみには隠し切れない疲れがあった。

もしかしてわたしは、無意識に人を傷つけていたのだろうか。

自分のわがままを通すだけだと、思っていた。

世界を巻き込んでしまって申し訳ないと、思っていたけれど。


はっきりと、理解できていなかったのだろうか。

自分が今まで行ってきた行為がどれほどに罪深いかを。






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