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きになるはなし  作者: 雲雀 蓮
昔々の出来事
33/70

三十二本目


男は後悔しました。

自分の発明はやはり人を傷つけるだけのものだと、知ったからです。


自分の犯した罪に耐え切れなくなった男は自殺をすることにしました。


大きな穴を掘り、その土を大きな大きな箱に入れました。

その箱には一カ所だけ壁がなく、傾けてしまえばこぼれてしまうでしょう。

金具を付けて縄を通し、その縄を切るためのギロチンのような仕組みを作りました。

そして、穴の中に入り仕組みを作動させ、自らを生き埋めにしました。


徐々に埋まっていく空白に、彼は何を思ったのでしょうか。

それを知る人は、誰もいません。



そもそも彼が亡くなったことを知ったのは、それからずっと先の話なのですから。




(少女はずっと、その光景を見つめて居ました。

男が泣いていたことも知っていました。


でも止めることはしませんでした。

彼を本当に愛していたからです。

彼の意思を尊重したいと、思ったからなのです。


彼が死んでも、彼女の命は終わりません。

”悪魔”となって、人間とは同じ時間を生きられなくなったのです。

人間が何十人も生きる分ほどに、彼女は生きることになってしまったのです。



彼女は静かに泣きました。



彼とはもう会えないからです。

彼の恋人にはなれないからです。

生きている彼を、見つめていることはもうできないからです。


こんもりとした土を見て、少女だったものは思いました。

空に彼を送ってあげたい、と。



”悪魔”である彼女は常に宙に浮いています。

足が大地を握るように歩くことはもうできません。


人は大地にしがみつくことしかできませんが、

人ではないものは、ものがつかめません。


”悪魔”である自分ですら、地面から数センチです。

きっと元は人である彼もそう高くは飛べないでしょう。

空にあるはずの天国に、たどり着けないでしょう。



”悪魔”である彼女は神を信じてはいませんが、彼はよく神頼みをしていたのを知っています。

彼は神によって救済されたいと願っていました。


感情が分からない人間ですが、どうかおそばに置いてください。

私はいついかなる時も人間で在りたいと思います。


そう、願っていました。



科学者であるけれど、彼は誰よりも信心深かったのです。

毎日毎日神に祈りをささげ、懺悔していました。



それをずっと見てきたガラス玉のような瞳は一対だけでした。



”悪魔”は墓標も立ててもらえないその墓に、木を植えました。

この世のどこにもない、そんな木を。彼のためにです。


いつか、天高く伸びて彼を天国へと連れていけるように。

大きく大きく、育つように新しく種を創造したのです。)







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