三十本目
(”巫女”である少女には自我が失われていました。
本来ならば二人で担うはずだった力が彼女一人に集中してしまったためです。
男に計画を持ち掛けたのは、彼女自身ではありませんでした。
彼女の中にある力が村を滅ぼそうとしていたのです。
彼女は薄れゆく意識の中、恐怖しました。
このままではこの村は全てなくなってしまうだろう、と。
大好きだった”贄”との思い出すらも消えてしまうだろう、と。
”巫女”はこの村が好きでした。
村の人はみんな優しく接してくれたおかげで、幸せに過ごしてこれたのですから。
”贄”のことも、大好きでした。
血を分けた家族です。
この世に二人といない、掛け替えのない半身とも考えていました。
村も”贄”も、”巫女”にとって大切で、失いたくないものでした。
だから彼女は、最後の力を振り絞って男と話をしました。
××××の存在を消そう、と。
そうすればこれから先は大丈夫だから、と。
私がずっとこの村を見守っていく、と。
もう二度と同じことは繰り返させない、と。
男は認めませんでした。
”巫女”の急な心変わりにおびえたのです。
彼女自身の意見を聞いたのにも関わらず、他者によって操られていると勘違いしました。
そして彼は手にペンを持ち、”巫女”の喉元に突き刺したのです。




