二本目
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「これは皆さんもよく知っているおとぎ話ですね」
今日も元気に教卓で授業をしている先生。
朝から道徳の授業だなんてついていない。
この先生は化粧がきついから。
ふんだんにまき散らされている香水の香りもプラスされている。
双方から異臭がして、朝から吐き気を催す人が続出する。
そうならないように僕はそっと窓を開けた。
新鮮な空気が僕の周りに広がっていく。
今日はまだ誰も吐いていない。
開始十分だから当然ではある。
今先生が話しているのは、「木に成る話」だ。
大体僕みたいな子供は「きになるはなし」と冗談ぽく話す。
(気になるというのと木に成るを掛けているらしい)
この話は僕が気に入っているものだ。
僕はどちらかといえば、神様や奇跡というものを信じているから。
「この話があったからこそ、この村では墓に一本の苗木を植える習慣があるのです」
「埋葬してすぐに植えることで死者の魂を木に移し替え、」
「その植えられた木が天に届けば、その人は天国へ行けるのです」
空に神様がいて、空に天国がある。
そういう前提が前の授業でされている。
だからみんなぼんやりと宙を見ている。
つまり、授業は聞いていない。
真面目に聞いているのは僕だけだ。
僕は村長の息子だから。
いつかお父さんの後を継いで、人を纏めないといけない。
そのための教養を今からしっかりしていかないと。
眠くて落ちていく瞼を必死に開きっぱなしにする。
朝はとても苦手だ。
「植えられた木の種類は予め聞いていれば問題ありません」
「しかし、言う間もなく逝ってしまった方のものは、」
「その人にあう木を選ぶことが生きている村民の義務です」
どや顔で言い切る、いい年をした女性教師。
彼女は一体何がよくて、話を碌に聞かない子供に話しているのだろうか。
単純な興味で一瞬思考がずれた。
早く終わらないかな。
次は算数の授業。
そろばんを教えてくれる先生が来てくれるんだ。
その先生は全然おしゃれしてないけれど、きれいな人なんだよ。
徐々に意識が薄れていって。
僕は自分が寝ていることに気付かなかった。
楽しみにしていた算数の授業も、そのあとのも目を覚まさなかったらしい。
ようやく目を覚ました時、教室に誰もいなかった。
時計の針が戻っていたのは気づかなかった。