二十七本目
「これってもしかして、」
「何かあったの咲希?」
「あ、はい」
咲希ちゃんが見つけたのはA4のファイルだった。
紙を金属で挟む形のそれにはA4の紙以外の小さなメモが挟まれていた。
そして、そのファイルのタイトルは。
「『完全人間作成機関』って書いてありますね」
「・・・・天才の考えることは理解ができないわ」
「でもこれ、ぱらっと見ただけでも”災厄”に通じるものがあるのは確かだ」
「持っていこう」
他に必要そうなものはなかった。
後は、誰がいるとも知れない一階を通ってお社に戻って今後を考えるだけだ。
そう。誰にもばれないように。
「思ったんだけど、この家に誰かがいるとは思えないんだよね・・じゃない、思えません」
「はぁ?何言っているの。さっき見たでしょ」
「掃除の途中に何かあったから、散らかり放題なんじゃない・・・ですか?」
「咲希って敬語下手ね。普通に喋っていいのよ?」
「・・・・うぅ。分かった」
玄関からおかしい光景は広がっていた。
それらは全て掃除の途中であることは、普通誰もが知っている。
家事をよく手伝っているのだろう、咲希ちゃんにはすぐ分かった。
(蝶よ花よと育てられた冬華やお坊ちゃんの春樹、それと私は知らないが)
室内専門だったのだろうが、それでも十分なほどに全てが途中のまま放置されているのだろう。
この状態でもそこまで荒れているとは私には思えないが。
「何か外で儀式でも行われているのかもしれない」
「じゃぁ、急いで戻らないとじゃない!」
「いや。違うと思う」
「桜花?なんで」
「これはおそらく、あの黒い影がみんなを殺していったんだ」
”災厄”との関係は終ぞわからなかったあの黒い影。
何度となく私たちはそれに殺されてきた。
あいつらは必ず、どこからともなく現れてくる。
まるで、この村を滅ぼそうとするかのように次々と村人を屠っていく。
「あれは、人間の死体というものを残していかないから」
突き刺さった黒い影が、人間を吸収していくかのように。
血が抜き取られた体をどこかへ連れていく。
それで何度も大切な人を失った咲希ちゃんにとって、忘れられないものだろう。
私だって、忘れてない。
あれはまるで、“災厄”と似た存在にも思っている。
もしかしたら、先ほど見つけたファイルに何か書いてあるかもしれない。
「今、ここを動かない方がいいかもしれない」
「お社は最後に回るはずだから、作戦を立てるなら今ここでした方がいい」
気になっていた水滴の先には、割れた花瓶の欠片が落ちていた。
この屋敷は、もぬけの殻だったのだ。
何も隠れる必要はなかった。
それを知ってほっとしたような、悲しいような気持ちになりつつ
私たちはリビングで話し合いを始めたのだった。




