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きになるはなし  作者: 雲雀 蓮
壊された世界
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二十四本目



「なんだか、いいタイミングだったみたいだね」



全身真っ黒のコーディネイトの春樹が現れた。

愛想笑いなのかどうか、判断できない顔はどう解釈すべきだろうか。



「これで、”災厄”に関して詳しい人物が二人いることになる・・よね?」

「緊張しないで、咲希。間違ってないから自信持っていいと思うよ」

「相変わらず仲良し兄妹で羨ましい限りだよ」

「・・・中に入りましょう。ここはあいつが来るかもしれないから」



村長は村の中でも一番私に対して敵対しやすい存在だ。

私が居なくなった瞬間、殺そうとするほどの盲信者である。

それに咲希ちゃんは日差しに抵抗力がないに等しい。

疲れて直す気もなくなったのであろうずれた帽子が防御の役目を放棄しているし。



「あ、ありがとう・・・ございます」

「別にいいよ。私も敬語苦手だから普通に喋って」

「・・・そう言う意味じゃ、ないんだけど」

「桜花、今のは『気遣ってくれてありがとう』であって、言葉遣いに関して返すのは変よ」

「そ、そうなの?え、と。どういたしまして」



何はともあれ、今この場には”巫女”と次期村長がいる。

今後の村を支配していくはずの二人がいるのだ。

私はもちろん、咲希ちゃんや明樹君も知らないことを知っている二人。

これからの行動の判断に十分な情報は得られるだろう。

そう思い、かすかな希望が見えた気がした。


戸惑い、躊躇いつつも、みんながお社の中に入った。

私一人だと広く感じるお社は、5人も入れば狭くなった。

座布団も何もない部屋に全員が座ったのを見計らって仕切ったのは春樹だった。



「まずは、僕から話そうか。

 そもそも”災厄”の元になった存在の話だ。


 君たちは聞いたことがないかい?いまから語るのはひとつの昔話だ。

 昔居たある男が居た。

 その男は秀でた頭脳を持っていて、周りの人から見れば魔法のような力をふるった。

 しかしその男には人の気持ちを理解できないという欠陥があったんだ。

 だから、何のためらいもなく他者を実験に利用したんだ。

 最初は一年に一人だったんだけれど、年を重ねていく内に犠牲は増えた。

 結局得られたのは、膨大なエネルギーの塊。つまり”災厄”そのものだ。


 昔話だけあって、最後に彼は自身の命と引き換えに”災厄”を押さえこむんだ」


「ちょっと待って。そんな話誰もしてくれなかったよ」

「うん。僕も知らない。少なくとも授業ではされなかったよ?」



咲希ちゃんと明樹君はどうやら知らない話らしい。


でもどこかで聞きおぼえのある話だ。

私が知っているとなれば、おそらく冬華も知っている。

だって、私はまともに勉学に励むことはできなかったから。

主に冬華か遙香による情報しか知ることは叶わない。



「それ、私たちも知っているわ。

 その本は確かこの村に2冊しかないのよね。

 村の図書館と、もう一冊はどこだったかしら・・・?」

「そこの神棚っぽいとこに、だよ、冬・華・ち・ゃ・ん」

「遙香!」

「なんで”悪魔”がここにいるの!」



思い出そうと記憶を辿る冬華の後ろから気配なく表れたのは遙香。

咲希ちゃんは明確な敵意、私は純粋な疑いを向ける。



「べっつにー?暇なのー。外に出られないからねー」

「あんたは全部知っているの?知っていて、そんな態度なの?!」

「咲希ちゃん、落ち着いて。怒っても遙香は喜ぶだけだよ」



酷く悔しそうな顔だったが、咲希ちゃんは怒りを収めてくれた。

そして、先ほどの話の続きにかかる。

どうせ”悪魔”である彼女は何も教えてはくれないだろう。



「さっき、冬華の言っていた本。あれは確かに神棚にあるよ。

 ──”災厄”の封印代わりに置いてあるあの赤褐色の奴がそうだよ。

 前、確かに見た。内容も春樹の言っていた通りの話。


 でも、途中である双子の姉妹の話があるの。

 その二人は同時に主人公の男性に好意を持ってしまい、

 どうしても男性と結ばれたい姉が妹を殺してしまうの。

 男性も、姉を伴侶に選ばずに実験台にして殺して・・・って部分が途中にあった」

「なにそれ、そんな話」

「うん。冬華の読んでくれた本にはなかった。でも、そこの本にはあった。確かに読んだよ」



覚えるほどの情報を得たことが生まれてこの方ない。

乾燥した大地に雨が降った時の様に、一滴もこぼすことなく覚えていられたことに感謝したい。

一語一句とまではいかないが、重要なものを記憶していられたのだから。


繰り返す時間の中で一度、本を読んだのだ。

封印を解いて、願いを叶えるまでの短い時間。

その間にあの本を読み返したのだ。

冬華との思い出をかき集めようと思って。



「なるほど、僕の読んだものとはまた違うみたいだ。

 つまり、僕らの読んだ方は写本や推敲された後のものだったということか」

「そして、もしこれが本当だというのならば”災厄”は人工物。

 何か弱点があるはずよ」


「ないよ。そんなの。今春樹が言ったじゃない、頭のいい男性が”災厄”を作ったって。

 仮に弱点があったのとしても、それは貴方たち子供に理解できるものじゃない」



まるで、立ち向かうこと自体無意味と言わんばかりの遙香の言い方。

それに少なからず怒った冬華の横で考えていた。


もし本当に”災厄”の存在をなくすなら、そのために必要な方法とは何か。

なぜ、遙香は今このタイミングで現れたのだろうか。

今も村で死人は増えているのだろうか。


この場にいる5人は現状で死ぬための、可能性がある。

そうしたら、一番に死ぬのは誰か。


物語の男性が昔実際にこの村に居たのならば、彼は何を望んで”災厄”を生んだのだろうか。







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