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きになるはなし  作者: 雲雀 蓮
壊された世界
24/70

二十三本目

**



悪魔の話は間違っていない。

私は“贄”だ。

理由は定かではないけれど、そう言うことになっている。



生まれてからずっと、その事実を受け入れざるを得なかった。

だから、今更悲しく思うことはない。



自分のしてしまった愚行があまりに大きな悪影響を及ぼしてしまったことを悔いたい。

報いになるかはわからないが、元に戻すことは私自身の責務だろう。


きっと迷うことなく私は死を選ぶ。


それに対して、誰かが悲しんでくれるとは全く思わない。

誰かが止めてくれるとも思わない。



それが無性に哀しいと思った。



「そう、だね」



お社に戻ろう。

それ以外に私の存在価値はないのだから。



さく、さくと音を立てて草木をかき分けつつ歩く。

ぬかるんでいるはずのない地面が、湿り気を訴えかけてくる。

ありえないことばかり、起きている。

これらは全て私と咲希ちゃんのわがままの所為だ。


きっと片割れだって気づいているのだろう。

怒りに来るのだろう。

自分を見殺しにした理由は何か。

どうして明樹君と咲希ちゃんの手助けをするのか。

封印を勝手に解いてしまったのか。



案の定、片割れが私を待っていた。

お社の前で腕を組んで。

いわゆる仁王立ちで。



「さて、どこからお説教するべきかしら」



疑問文なのに、人の意見を聞く気のない語尾。

それがどうしようもないくらい、いつも通りで涙が出た。



「ちょっと泣かないでよ。怒り辛いでしょ」

「だってぇ~冬華だけはいつも通りなんだもんー」

「何よそれ。おかしかったら泣かないの?」



片割れ─冬華は呆れたような顔で私の頭を撫でた。

荒々しくも優しさの伝わるその手。

私はそれが何とも言えず好きだった。

今も変わらず好きだ。


どことなく気持ちが落ち着くような心地。



「あんたは、何か知っているわよね。今の状態を説明できる?」

「ある程度は・・・」

「そう。ならさっさと話しなさい」


不遜な態度で冬華は言った。

最初っから私を信じてくれるようなその言葉。



「・・・・・信じてくれる?」

「嘘でも吐くつもりなの?」

「っそんなことない!」

「なら早く。時間がないのよ。このままじゃ、私だってすぐ死んでしまうわ」



冬華が何を言っているのか、一瞬理解できなかった。



「死ぬって、どういうこと」

「え、あんた知らないの・・・って当然か」

「もしかして、誰か、死んだの?」

「えぇ。明らかに無傷の状態で、『土砂と一緒に山から流れ落ちてきた』らしいわ」



人越しに聞いたからだろうか。

明らかに違和感しか抱けないその死因。

それは過去あった事象の一つであることを私は知っている。



「他にも謎の死が相次いで発見されている。

 でも医者は必ず『正しい』死因を告げる。誰も異論は唱えない」

「・・・村が別の時間を混濁して覚えているから、そうなっているのかもしれない」

「別の時間、やはり時間遡行を願った人物がいるのね」

「うん、私と咲希ちゃん」

「咲希・・・あぁ、あの白髪の子ね」

「このままだと、みんな死んじゃう。私の、所為で」



抜け出せない、謎の死は迫ってくるこの村で。

どうやって生き延びることができるのだろうか。

明らかに分が悪い。

今時間を巻き戻したとしても、結果は同じだ。

これ以上の時間を巻き戻しは害にしかならない。


そこまで考えて涙が一筋こぼれた。



ぱぁん!



涙の筋が出来た頬に平手が飛ぶ音があたりに響いた。



「泣いている場合じゃないでしょ。あんたばかなの?」

「でも、何したらいいの!」

「思考停止しないで!最期まで考えなさいよ!!」

「・・・・でも、でもっ」

「安易に人に頼らない。この村に信じられる人物が、あんたに居るの?」



甘えは許さないと、冬華は怒っているようだ。

確かに私は生まれながらにして”贄”つまり、存在自体人間として認められていない。

そんな人しかいない村に味方なんていない。

だから私自身が助かることをあきらめたら、そこで私の生は終わる。



「一つだけ、方法はある」

「あんたの命を代償に、元に戻すとでもいうの?」

「・・それ以外になにかあるの?」

「そんなんで戻るとは思えないって、言っているの」



冬華は髪を手櫛でいじりながら、ぼやく。



「もともとこの事態は”災厄”に頼ったから起きたもの。

 それを”災厄”で戻して、元通りとはいかないと思うわ。

 そもそも”災厄”という謎の存在が世界の在り方を変えられるほどの力があるとは思えない」

「確かにそうかもしれないですね。”巫女”さま」



さくさくと、山道を歩いてきたのは咲希ちゃんと明樹君だった。

いつも通りの身支度をした咲希ちゃんは疲れが顔に出ているのが分かる。



「君は明樹だっけ?そっちは”贄”、”巫女”はこっちよ。違い、分かりそう?」

「・・・んーとよくわからないです。でもどっちでもいい」



私と冬華の違いは限りなく少ない。

見た目だけで判別するのは初対面ではほぼ不可能。

しいて言うならば私の方が肌が白いくらい。

それでも冬華も十分に白いから、色が完璧に判断できなければ難しさは倍以上だろう。



「そもそも”災厄”とは何か、それが解決への一歩ということになる」



今までは明樹君だけにしかはっきりと意見を言わなかった咲希ちゃんが言う。

私たちは重要なことを知らな過ぎたのだと。

後ろから近づく足音に、その場に居た4人で振り返った。




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