二十一本目
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おかしいことになっていた。
いくらか理不尽な習わしがあるとはいえ、無意味に人が死ぬような村ではなかったはずだ。
それなのに。
「おい、誰か手を貸してくれぇ!」
「担架持ってこい!」
野太い男の声で、遺体の搬送に必要な言葉が飛び交う。
その背景には甲高い女の声で悲鳴が響く。
妻子ある男性が、突然死んでしまった。
土砂災害だと大人は言っていたけれど、ここ最近雨なんかそう降っていない。
地盤は安定しているはずだ。
それをみんなが分かっているはずなのに。
まるで、土砂災害が起きて当然という顔で被害を淡々と受け入れていた。
私が狂っているのだろうか。
それとも彼らが?または両方?
以前の記録が残ったまま、この世界は始まってしまった。
今回の異常をまとめるとそんなところだろうか。
私はなにも覚えていないわけじゃない。
副産物の様に与えられたこの記憶が、どうしても信じがたいだけだ。
どうやったら自分が死ぬ光景を見られるのか、誰か教えてほしい。
「・・・・“災厄”が暴走している?」
物心つくころからずっと、“災厄”については教えられてきた。
村の住民から一つずつ何か奪い取ったエネルギーの塊。
望めば人智を超えた力を以て願いを叶えてくれる存在。
ただし代償は願いを告げたその人自身の存在だ。
全てを“災厄”に捧げることで、使った分のエネルギーを“災厄”に返す。
だが、今まで暴走したことなんかなかった。
こんな異常はかつてないものだ。
時間が狂っているということは時間に関わることを願った人がいることになる。
でもそうなると、願いの度にもとの時間は消えるはず。今回は、うまく消えなかった?
理由は分からないが、私はこの事態を収束させる義務がある。
たとえ、命と引き換えになるような手段だったとしても、選ばなくてはいけない。
「・・・・行こう」
諸悪の根源である“災厄”のもっとも傍─お社へ。
この事態を引き起こしたであろう人物もそこにいるのだろうから。




