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きになるはなし  作者: 雲雀 蓮
壊された世界
18/70

十七本目

***




きぃぃぃぃん。




耳が詰まったような音がする。

それは変か。聞こえない感じがする。

気圧で押されたようなあの嫌な感触。

また、時間が戻ったのだ。

惨劇をそのままにして、私は沢山の人を未来ごと消し去ったのだ。



最低だ。

最低の目覚めだ。



そんな気持ちに反して、太陽は今日も明るく昇ってくる。



「・・・・・ぅう」



これからどうしよう。

今はいつで、どういう状況なのか。

私には知る術がない。だって、”贄”はお社の外に出られないから。



そう、私が時間を巻き戻したって何の意味もなかったんだ。


最初から詰んだ。

やり直ししても、咲希ちゃんに記憶を託すべきだった。

私なんかじゃ到底何もできないのだから。

ただのバカな子供に何かできるわけなかったのだ。



「・・・・いる?」



片割れの声が、小さく聞こえた。

お社の裏から聞こえたから、そっと近づく。

そして、同じくらい小さい声で応える。

お社の裏には大き目の空気穴のようなものがあるのだ。

夏はそれがないと私が死んでしまうかもしれないから。



「何?」

「これにちょっと着替えて」

「・・・・うん」

「早くしてよね」



空気穴を通して渡された服は、今着ているものとは違ってかわいらしいものだ。

(ちなみに今着ているのは、ぼろぼろの着物だ)

フリルが随所についていて、オレンジやピンクといった配色ばかり。

そして、スカートだ。

着物もロングスカートみたいなものだけれども、やはりスカートは短い。

足が半分以上は出てしまう。


でも文句は厳禁。

それによって何かしらあって困るのは私だから。



「・・・・できた」

「なら、あんたの着ていたの綺麗に畳んで外に出なさい」

「えっと、入れ替わり?」

「そ。今日一日はお願いね」

「・・・・・・?」

「逢魔が時になったら戻ってきなさい」



その後今日一日について予定を聞かされ、暗記させられた。

逢魔が時にはすべての予定が終了するのだと言う。

入れ替わりの理由を訊いたけれど、何も答えてはくれなかった。

ただ悲しそうに俯き、私を睨むのだ。

意味が解らない。



でもいつまでもそこに居れば更に怒られるから。

私は片割れと同じようにゆっくり、丁寧にお社の中を歩いた。

別に入れ替わるのは初めてじゃないから。

勿論時間をやり直す前から何度かあった。

毎回毎回こうやって私の元へ来ては言うのだ。

「習い事がだるい」と。


退屈だから抜け出した。

代わりに勉強を教えてあげるから、代わりに習い事へ行って。


そういった簡単な関係だった。


私は彼女の嫌なことを代行していた。



別に習い事は嫌いじゃなかった。

でも別の人になりきることが嫌いだった。

難しいし、面倒だし。少しでも素が出てしまえば怒られるし。

だからあまり楽しいことばかりでもなかった。

それに知らなくてもいいことを知るばかりだったから。



「ありがとう」



きっと彼女は分からない。

でもだからこそ、伝えておきたい。

やり直さなくて済むように。

一日一日を大切に生きて行こう。



「別に私が嫌だから代わってもらうだけよ。ほら、さっさと行きなさい」

「うん」



パンプスという変な靴を履いて、外へ駆け出す。

その背中で彼女の声が聞こえた。



「その靴で走るな、馬鹿」って。





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