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きになるはなし  作者: 雲雀 蓮
繰り返される事象
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十六本目


それは多分誰もが願っていた未来だった。

誰もが願う分、一回もかなわない。

そんな辛い世界だから。


自分の夢なんか叶う訳ない。

自分の望みなんて叶う訳ない。

ただ只管地獄のような世界で生きていくだけだった。

絶対に夢なんて見ない、そう誓って。



でもそれもままならずに、私は大きくなった。

言葉を知らない状態から、つらつらと恨み辛みを続けられるくらい。

自分の存在も理解できなかった状態から、世界を憎むようになれるくらい。

夢を見て、叶えるための努力がとても美しいと知るほどに。



時間はいつも私だけ置き去りにする。

世界も私を無視する。



だから、気がついたら“災厄”の一部になっていた。




・・・私は咲希ちゃんが羨ましい。とても。

だからその分、憎らしい。私には真似できないことだから。



「好き」だなんて。

口が裂けても言えない私と違って、いつだって自分の愛を伝えていて。

一緒に愛の逃避行を計画・実行するなんて。

天と地ほどの違いがいつだって存在している。

私が咲希ちゃんみたいになるなんて。


例えるならば小石が自発的に空に向かって飛ぶようなものだ。ありえない。

それを可能にしてしまったら、この世界は狂ってしまう。


いや、私が狂うのか。

正気を失ってこの世界を自分の思い通りにして。

他の皆の迷惑だって考えずに世界を改変してしまうのだろう。

彼の気持ちすら蔑ろにしてしまうのだろう。

それは一番阻まなくてはいけない。何よりも大事な筈の彼を傷つけたくはない。



本当は、巻き戻さずにいたかった。

巻き戻してしまえば、私が今まで彼と過ごしてきた時間を消すのと同義で。

今まで一緒にいた彼を殺すことになるから。


今日までの彼を殺し、この先の未来の彼を消す。

ただ殺すことよりもひどいことだ。酷い裏切りだ。

彼のためだ何だと言っても、結局は私のエゴだ。

恨まれこそすれ、感謝なんてされるわけない。

だから私はもう彼に思いなんて伝えられない。

こんな酷いことをしておいて自分だけ幸せになんてなれるわけない。



この思いはどこかに捨てよう。奈落の果てに沈めておこう。

もう彼のことは・・・忘れなくちゃ。



きっと大丈夫。すぐにでも忘れられる。

何回も繰り返していけば、長い時間が経てばきっと。


今は辛いけれど、いつか遠い未来で、忘れられる。

”災厄”の恐怖だって薄れたんだからきっと大丈夫。



こんな風に涙なんて出なくなる日が必ず来る。

それまでは未来だけを目指そう。

前だけ見て、後ろなんて振り返らずに。

自分で決めたことだ、未来の自分もこれまでの自分も納得してくれる。


大丈夫、私はまた頑張れるから。

だから、今は少しだけ彼に寄り掛かりたい。



「温かい」

「あ、あの?」

「優しいにおい」

「ちょ、やめてよぅ」

「わっ」



照れたのか何なのか、彼に引きはがされた。

思ったよりも力があるようだ。

そもそも私の体が軽すぎるのだろうか?

今も顔を赤らめて私から距離を取る彼。

その表情は今まで見たこともないものだった。



「でも、ごめんね」

「さっきも言っていたけど、何を謝ることがあるんだい?君は僕に何かしたのかい?」

「ううん、今からするの。詳しくは言えない。言っても到底信じられないことだから」

「?」

「いつか、わかるよ。私はね、すっごく悪い人なの」



だから、さようなら。




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