十二本目
朝早くから村が騒がしい。
なんでだろう、と目を覚ませばお母さんが泣いていた。
久しぶりにボロ泣きしていた。
すでに顔の至る所が真っ赤に染まっている。
「何か、あったの・・?」
「明樹君と、咲希ちゃんが・・・」
震える指で外のどこかを指さす母。
帰ってきたのだとは不思議と思わなかった。
なにか、不幸があったのだと迷いなく思った。
母の指さした方角だけを頼りに走った。
きっと大丈夫だって。そう思わせてほしいと。
「・・・・・・っ!」
そんなこと、あるわけないのに。
土砂が絡まった二人の遺体。
咲希ちゃんの白い髪は土砂によって茶色に染まってるし、
明樹の肌も同様だ。
血が見えないところを見ると、雨によって流されてしまったのだろう。
それはつまり、二人の体内にあったはずの血は減少しすぎたことを示している。
手遅れなんだ、って。誰かが言っている気がした。
「なんで・・・こんなことに」
二人が儀式の前に居なくなってしまったことは聞いた。
でも誰が、こんな結末を予想していたのだろうか。
なんで物言わぬ体になって戻ってきたのだろうか。
外に行く恰好している咲希ちゃんを見る。
お社に行こうとしたのが分かる。
もしかして、途中の道で足を滑らせたのだろうか?
最近の雨は酷くて、歩けるような道じゃなかったのに。
だから儀式は中止になったのに。
きっと彼女は自分の体力がないことを考えて、先回りしたのだろう。
連絡が行く前に出て行ってしまったのだ。
せめて、両親に言って出てくれれば探せたのに。
「・・・・っぅ」
数少ない友人が減ってしまった。
明樹は兄弟いや、双子のように育ってきた。
それは彼の母を案じての措置だったけれど、俺はとても嬉しかった。
一人っ子の家庭はとても少ない。
だから俺は小さいころから孤独を強いられることがあった。
でも明樹や咲希ちゃんがいたから、俺は一人じゃなかった。
楽しくて、嬉しくて、どうしようもなく幸せだった。
「ぁあ・・・・あああああ!!」
涙がぼろぼろこぼれていく。
頬からこぼれていく滴が生温くて、体温が抜けていくのを感じる。
止めようにも止まらない。
『どうして』なんて言葉ばかりが口からは落ちていく。
「・・・・・」
後ろに誰かが立っている。
振り向く気力もなく、棒立のままその人の対応を待つ。
ふわり、と包み込まれる感触が来た。
温かくて、優しくて。
まるで前にも同じことがあったかのような。
ううん。お母さんみたいな温かさ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・こうなっちゃうのか」
そう呟いて、彼女は消えた。




