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きになるはなし  作者: 雲雀 蓮
繰り返される事象
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九本目

「・・・・・あぁあぁあああああ!!!」



悲鳴のような声が村に響いた。

真っ青に晴れた空が改めて憎いと感じた。



「な、なんだろう・・・向かいの家から聞こえたね」

「うん」



きっと男の双子が生まれたんだ。

ループ毎に多少ずれが生じてしまうよう。

双子が生まれる家は違う。重複することもあるけれど連続じゃない。

今回は前より一日早くに生まれてしまったようだ。



どの家も贄に捧げることを抵抗しすぎることはない。

結局は手放すことになる。


知っている事象だから、見に行っても仕方がない。

外出の準備をしようとしていた明樹を止めた。



「え、気にならないの?」

「別に。それに晴れた日に外なんて出られないよ」

「・・・・ごめん」

「なんで明樹が謝るの?」

「だって、今僕・・・咲希のこと考えないで・・・ひどいこと」

「気にしてないよ。だって仕方ないことじゃない。今始まったことじゃないし」



フォローは念入りにしておかないといけない。

明樹はいつも深刻に考えすぎて深みにはまってしまう。

悲しいくらいに真面目。

今日はなんとか言いくるめられたけれど、次はどうかな。

この話題はあまり触れたくはない。お互いに。



「(もしかしたら、全部早まっちゃうかもしれないな)」



何とも言えない虚無感が私全体に行き渡る。

今までと同じことになってしまったら。

次はないかもしれない、この状況で。


せめて、明樹だけは。

生きてこの村から出られるように立ち回らなければならない。


それだけが、わたしの願い。



だから今は少しでも明樹のそばにいたい。

わざとらしくても、無理矢理でも。

離れるその時に後悔なんてしたくないから。



「明樹、やっぱり外に行こう」

「え・・・」

「日焼け止めどこだっけ?」

「あ、ちょっと待ってて」



ばたばたと駆けていく明樹。

それを見送って私はできる限りの身支度をする。

長袖、帽子。サングラスは日焼け止めしてから。

あと、長ズボンを探そう。


それと・・・・運動靴。



「あったよー」

「ありがとう」



明樹から日焼け止めクリームを受け取って四肢に塗る。

顔にしようとしたら明樹が塗ってくれた。

白くなってないかを確認してからサングラスを掛ける。

よし完璧!



「いこう」

「うん」


「・・・・どこに?」

「えーーーーーとね」



双子が生まれたら、行く場所は一つ。

村の神社。”巫女”の妹の住んでいるお社だ。


問題はお社に行くには山道を通らなくてはいけない。

長時間の移動が強いられるのだ。

日焼け止めを何度か塗らないと悲惨な目に遭う。


なぜ、そこへ無理をしてでも行くか。

それは”巫女”がとある習わしをするからだ。


前に言ったように、男の双子は村に存在してはいけない。


確か、昔”災厄”によって男の双子が全員殺されたことがあったらしい。

そうなると大幅に人口は減ってしまう。

片方だけ生かせるのならば、そちらの方がいい。

残酷だけれども、仕方ないのだと大人は全員言う。


村全部に被害を出すわけにはいかない。



「(・・・・賭けになるかもしれないなぁ)」



もしかしたら、今がチャンスかもしれない。

お社の向こう側の山裾は、村の外だ。

一山分超えて行かなくてはいけない上に、大人が目を離してくれるかはわからない。


見つかってしまえば、もう逃げることはできないだろう。


そして、村に留まればあの黒い影が・・・。



本当に、賭けだ。

自分と明樹の命を賭ける。



「(負けられない戦いがある、だっけ?)」



そんなフレーズをどこで聞いたのだろうか。

ただその通りだと思うばかりだ。

負けてしまえば、すべてが終わってしまう。

それは許さない。わたしが、許さない。



何度繰り返したのかはもう忘れてしまった。

人が死んでいくのを、見たのは忘れたい。



「みんなより先にお社にいこっか。 

 わたしたちの足じゃ遅れちゃうもん」

「・・・・そうだね」



血を分けて生まれた兄弟を殺される。

今後の人生にも残る大きな傷を誰が治療してくれるのだろうか。

明樹はずっと考えていた。

自分じゃなくても、よかったんじゃないかって。

生き残った方なら、どっちでもよかったんじゃないかって。

泣きながら明樹はそう問いかけてきた。


そんなことないよ、なんて言えなくて。

双子だらけのこの村の異常さにようやく気付いたのだ。

まるで、片方を捨てるつもりで産み落とすような異常さに。



「・・・・・・・まさか、ね」



もしそうならば、この村はおかしい。

全てがゆがんでいる。





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