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回想
――者が騙るから者騙。――者を騙るから者騙。――者で騙るから者騙。――者に騙るから者騙。――者すら騙るから者騙。――者へ騙るから者騙。
――物語を騙るから、者騙。
人間は死ぬ瞬間に、走馬灯を見るという。
また、一番大切な人間の顔が見えるという。
真偽のほどは知らないが、もし本当に走馬灯が走るとして、僕は誰の顔を見るだろうか。
常に希望を持ち続けたあの人だろうか。他人を受け入れ続けて自分を失ったあの人だろうか。
論理の核が欲望であったあの人だろうか。存在自体が歪みであるあの人だろうか。
最弱故に最強だったあの人だろうか。全てが殺人衝動に結び付くあの人だろうか。
物語を追放され、それでも物語を狂わせたあの人だろうか。周囲から神の失敗作とまで呼ばれたあの人だろうか。
もしかしたら、自分自身の顔を見るかもしれない。もしかしたら、誰の顔も見ないかもしれない。
僕みたいな人間でも、死ぬその瞬間に誰かの温もりを感じられるのだろうか。