世界設定
以下、物語全体の世界設定となり、ネタバレもいくつか含むため全話読んだ後に閲覧することをお勧めします。
百年戦争。
およそ五百年以上前に行われた、かつてアースフォーリアの中央に位置していた国家、バルド帝国によって引き起こされた大戦。周辺国家を巻き込んだこの大戦は、人型極大魔法具、アインヘリアの投入によって、開始当時からバルド帝国が瞬く間に周辺の国家を飲み込んでいった。
この電撃作戦に遅れを取る形になったが、バルド帝国の侵略に焦りを覚えた国家群は同盟を結び、五百年後の現在では殆ど風化している『世界連合』の元となる『反バルド同盟』を築き上げた。
だが、世界中の戦力を集めたこの同盟ですら、当時のアインヘリア、魔人兵装を打倒するには、各国の優秀な魔法使いを幾人も犠牲にしなければならず、戦いは平行線を辿る。しかし、大戦開始から五年、バルド帝国側が新たに開発した最新のアインヘリア、魔法兵装の投入によって、戦局は再びバルド帝国側に傾くことになる。
次々に倒れていく国家が増える中、苦戦を強いられる同盟側を助けたのは、意外なことに、普段は人類と敵対している魔族の助力であった。何故、彼らが人間の助力をしようと考えたのは不明だが、現在の有力な推測はアインヘリアによる侵略は魔族の領地にも広がっており、遠からず壊滅させられると危惧した彼らは、異例ながら人類側と同盟を結ぶに至ったというのが一般的だ。
ともあれ、歴史上唯一の人類と魔族による共同戦線。当時の状況を詳細と語る資料はないが、再度拮抗状態にまで戻ったのを考えれば、魔族と人類のタッグは強力だったということになるだろう。
それから半世紀以上争いは経過する。残った資料によれば、再三にも及ぶ休戦協約がバルド帝国側に打診されたが、帝国はこれを無視。ただひたすら戦争を続けたとされるが、何が彼らをそこまで駆り立てたのかは現在でも不明だ。
そして、大戦末期、単機で国家を容易に壊滅できるほどの性能を持った恐るべきアインヘリア、魔王兵装は完成する。当時のバルド帝国の技術の粋を集めて作られた十八体の魔王兵装は、あらゆる戦場で多大なる成果をあげることになるが、その一方、あまりの殲滅能力で、魔王兵装が投入された大地は荒地と化し、さらにあまりにも膨大な魔力によって汚染された大地は、草木の生えぬ不毛の土地へと変質してしまう。
終末に突き進む世界。誰もが魔王兵装のばら撒く災厄に絶望しかけていたその時、世界の窮地を救ったのは、世界を崩壊に向かわせる魔王兵装の魔奏者、十二人であった。
一説では帝国のやり方に疑問を覚えた彼らが離反したといわれているが、何故彼らが帝国を裏切り、反バルド同盟についたのかを記す正確な資料は残っていない。
ただ事実として、十二機の魔王兵装と十二人の魔奏者の離反の結果、傾いた形勢を巻き返す力は、現代では『喪失された秘術』とされる超魔法科学を幾つも有するバルド帝国であっても存在しなかった。
だが、首都まで進軍を果たした魔王兵装率いる人類魔族の混成軍は、待ち構えていた残りの魔王兵装と、最高級の魔法兵装の軍と激突。結果、百年を生きたバルド帝国皇帝、バルド・ナインヴァイルの暴走による、魔王兵装の自爆により、バルド帝国そのものを巻き込む魔力の爆発によって大戦は終わることになる。
当然ながら、当時の精鋭を集めた人類、魔族の両軍は壊滅。魔王兵装もその半数以上が失われ、アースフォーリア中心の土地の殆どを不毛と化しながら、人類と魔族はバルド帝国の脅威を退けることに成功した。
そして、バルド帝国が残したアインヘリアの数々は、研究という名目で各地に散逸。反バルド同盟も、世界連合と名を変えて、世界は平穏を取り戻した。
補足・1
過去と現代の魔力量の違い。
当時は現代と違い、魔人兵装に対抗できるほどの魔力を有する人類が多数居たが、その優秀な血筋は戦争で途絶えていき、大戦末期の自爆によって、殆どが死に絶えたため、現代は血を残した貴族や、先祖返りしたごく僅かな平民しか、魔法を扱えるレベルの魔力を有していない。
年々一般市民の保有する魔力量は減少の一途を辿っており、ここにきてアルフレッドという魔力を一切有せず、さらに純粋魔力を受け付けない『抗魔力体質』と呼ばれる人間が生まれることになった。尚、世界でも抗魔力体質はアルフレッドしか今は存在しないが、おそらく今後アルフレッドと同じ体質の人間は現れるだろうと、帝国、王国両方の研究員が推測している。
補足・2
戦争後の魔族側の動き。
大戦後、魔族はそれぞれの生活圏に戻り、人類に対しての争いを再開した。何故、同盟を組もうと思う程度には理解がありながら、魔族は人類を駆逐、あるいは奴隷とすべく動いているのか。資料も存在しない以上、当時から生き抜く魔族に話を伺うしかないのだが、魔族の領域に入るのは至難のため、その理由を伺う術はない。
尚、彼らの生活圏は、大陸の最北端と最南端、そして大陸の周囲に点在する無数の島々であり、現在も稼動する魔王兵装はそちらのほうに派兵されている。
補足・3
人類圏と魔族圏。
魔族の生活圏は、人類が住む場所に比べて緑溢れる生命力が溢れた土地であり、その土地を可能な限り欲しい人類は、魔王兵装を強引に進撃させるという手をとれず、定期的にあちら側から送られる大量の魔獣を制圧することにしか魔王兵装を使えずにいる。
捕捉・4
バルド帝国の遺跡。
大戦中に作られたアインヘリア、魔人兵装、魔法兵装、魔王兵装は、魔術兵装という劣化複製が作られたものの、現代でも未だ魔人兵装の仕組みすら理解できていない状況である。自爆を逃れ、辛うじて生存したアインヘリアの数は、確認できるだけで魔人兵装が二百以上、魔法兵装が五十近く、魔王兵装が六機である。尚、これらを指して言われるオリジナルのアインヘリアだが、これらの製作や、その他戦争で使われた『喪失された秘術』も含め、魔力漏れによる被害を抑えるため地下で製造されることが多く、汚染濃度を高めないため至るところに工場は建設された。そのため、自爆の被害を逃れたアインヘリアや『喪失された秘術』は多く、これらの眠る場所を指して人々は遺跡と呼んでいる。
第二次百年戦争
百年戦争の開戦より約五百年。大戦終結より四百年後、半世紀程前から現れるようになった巨大魔獣の被害が増えてきていた時、アインヘリアの動力、搭乗者の魔力を何十倍にも増大する『レギオン』の劣化複製品である『フェイク・レギオン』と、装甲として使用されている『呼吸する鉄』の精錬方法が、各国家でほぼ同時に確立する。
情報が何故世界中に拡散したのかは不明だが、これにより、魔術兵装と呼ばれる量産型のアインヘリアが完成。各国家は巨大魔獣の脅威から身を守るために量産を一気に進めたが、有り余る力の矛先は、まずは量産に遅れた弱小国家へと向けられ、その戦火は加速度的に大陸全土を覆いつくした。
これが第二次百年戦争の始まりであり、数十年が経過した現代でも尚続く戦争である。
オリジナルには及ばないものの、五百年前に活躍した魔法使いと遜色ない戦闘力を発揮する量産型アインヘリアは、その扱いの容易さから大量に量産。五百年前以上の戦火を撒き散らすことになる。
結果として、長い年月をかけて回復してきた土地は、再びの魔力汚染によって荒廃。五百年前よりも荒野の規模が広がるという事態を巻き起こす。
そして今や生き残った国家はアリストテリア帝国と、ノーガルド王国のみ。一応属国、あるいは同盟という名の一方的な隷属を強いられながらも生き残った国家は幾つかあるが、最早、迫る魔族の進軍を防ぎつつ、戦争を行えるだけの力を持っているのはこの二カ国だけとなってしまった。
バルド帝国跡地の首都を境目のラインとして、日夜繰り広げられる戦争。消耗される資材や税はゆっくりとだが確実に人々の命を締め付けつつある。
これが大まかな第二次百年戦争の概要である。
補足・1
巨大魔獣。
第二次百年戦争開始より半世紀前、今から数えるとおよそ一世紀前に現れた巨大魔獣だが、その発生の理由は不明。魔力汚染による異常で魔獣が変異したとされており、事実、人体には有害なレベルの濃密な魔力すら取り込むことから、変異した種であるというのが通説とされている。
一般的なのはワームという芋虫のような巨大魔獣。フラワーと呼ばれる巨大な蛾の巨大魔獣が居る。
その他、巨大な湖や海に生息する巨大魔獣や、蜥蜴を二足歩行にしたような巨大魔獣も存在する。種類はそれなりに多いが、共通して言えるのは、アインヘリア無しでは討伐は難しいということである。
補足・2
アインヘリア情報漏えいの謎。
偶然というにはあまりにも出来すぎである各国同時のアインヘリア量産成功の報。何処からか情報が流出されたといわれているが、未だにその情報源は見つからず、当時の研究者も「たまたま解析が完了した」と言う者ばかりで、誰も何処からか情報が流れてきたと言う者は居なかった。
流出がばれたら処罰されると思った者達が隠蔽したとも考えられるが、それにしては流出された情報を得た者達まで嘘を言う必要がないのは事実であるため、このことについては謎が深まるばかりである。
過去の百年戦争でも同様に不可解な事象があったことを持ち出し、過去から延々と続く巨大な影の陰謀と騒ぐ者も居れば、神が我々を試しているのだと言って新興宗教をでっち上げる者まで、この問題が与えた影響力は大きい。
捕捉・3
五百年前の魔法使いと量産型アインヘリア。
かつての魔法使いと魔人兵装の戦力比は五十対一程度であったが、これは魔法使いでも充分な鍛錬を積んだ兵士との戦力比であり、精鋭ならば三人で一機と互角に渡り合えるというのは、残された僅かな資料でも確認できる。ちなみに魔族と魔人兵装は一対一で互角であった。
それに比べて、現代のアインヘリアの戦力比は、魔人兵装一機に対して十機程度で戦いになるとされている。これは当時の兵力を考えると精鋭と熟練兵士の中間程度の能力があると言え、さらに魔法を行使できる程度の魔力保有者なら誰もが量産型アインヘリアに搭乗できるため、かつての精鋭に近い実力の兵士が戦場に無数と蔓延る事態となった。
その結果、オリジナルのアインヘリアが存在しないものの、大量生産、大量投入が可能となった量産型アインヘリアの活躍で、未だ汚染が抜けきっていないのを差し引いても、五百年前よりも早いスピードで大地の汚染は広がり、戦火も拡大する結果となる。
アインヘリア。
下から魔術兵装、魔人兵装、魔法兵装、魔王兵装と区分されている増魔兵装アインヘリアだが、さらに詳細に分けると、百年戦争で活躍し、現代まで残った魔人兵装以上のアインヘリアをオリジナル。第二次百年戦争に投入された魔術兵装を量産型といわれている。
量産型とオリジナル。この二つの最たる違いとして上げられるのは動力炉だ。魔力増幅結晶『ハーツ』を加工して作られるこの動力炉は、量産型の『フェイク・レギオン』とオリジナルの『レギオン』ではその密度、増幅比率、そのどれもが比べものにならないほどである。
ただし、扱うには一定以上の魔力量が起動に必要であり、魔人兵装以上は全身から魔力を溢れさせることが出来るレベルでなくては起動することすら不可能だ。
その点、簡単な魔法を扱える程度で起動できる量産型は、扱いやすさだけならばオリジナルを遥かに上回る性能がある。さらに、最新鋭の第四世代では、より低い魔力量でも運用が可能になり、低コスト、高出力を実現した理想のアインヘリアとして評価されている。
だが無論、オリジナルが不要になったわけではない。魔人兵装クラスはまだ問題はないが、魔法兵装は戦況を大きく動かすほどの性能を秘めているため、帝国、王国、両陣営の切り札とされている。
その上に君臨する魔王兵装は、かつての惨劇が記されていることと、近年起こった魔王兵装の暴走事件によって一つの町が不毛の更地となったことで、両国で人類にその矛先を向けず、魔族と魔獣にのみ使用するという条約が結ばれた。
しかし、魔法兵装が用いる固有の魔法具は、大地の汚染を加速する危険な武装であることには違いなく、互いのアインヘリアの激突による大地の汚染は確実に広まりつつあった。
補足・1
魔王兵装。
大戦後期に少数のみ生産された究極のアインへリア。それぞれが魔法兵装以下のアインへリアとは比べ物にならぬ高純度のハーツで練り上げたレギオンを搭載しており、そのあまりのハイスペックに起動するのですら一苦労するほど。
現存する魔王兵装は、帝国が二機、王国が三機、そして帝国傘下のとある国に一機がそれぞれ配備されており、その能力は戦場を単機で塗り替える規格外の性能を誇る。
かつては十八機存在し、中には珍妙なコードネームを付けられている機体が存在した。その不可思議な名前から、何か元となる存在が居るのではないかとされているが、関連性は誰にもわかっていない。
以下、一号機から十八号機までを紹介する。
一号機アルト。
魔王具『無限魔力』・二つの特殊な『レギオン』で作られた動力炉型の魔王具。この二つの相乗効果で、半永久的に魔力を供給し続けることが可能。魔王兵装の欠点として、使用に膨大な魔力を必要とすることによる稼働時間の短さがあげられるが、これは一度起動してしまえば後は勝手に魔力を供給するので、魔奏者が死ぬか、魔奏者が意図してアルトを止めない限り、これを止めることはほぼ不可能。
二号機ラグナ。(消滅)
魔王具『超越人魔』・炎と氷と雷を内包した呼吸する鉄で象られた槍型の魔王具。白き炎と緑の氷と青き雷を自在に操ることが可能である。この魔王具を巧みに操ることによって、あらゆる局面でも単純な力押しで制圧することが可能である。
三号機ゼウス。(消滅)
魔王具『万雷招来』・周囲一帯の自然を自在に操る翼型の魔王具。最大で一キロ四方は完全に掌握するため、仮に生身である場合、周りの酸素を一気に奪ってそのまま窒息死させるというえげつない技も可能。
四号機クトゥア。(消滅)
魔王具『炎帝降臨』・搭乗する魔奏者もろとも自身を白い炎にする眼球型の魔王具。物理攻撃はほぼ無効であり、この状態になったクトゥアを打倒するには、それ以上の火力で掻き消すか、別種の神秘をぶつけて相殺するしかない。
五号機アイビー。
魔王具『完全係数』・右手型の魔王具。その場にある最適解に右手の性能を調整する。例えばあらゆる攻撃を凌ぐ盾があったとして、アイビーの完全係数はそれを打ち破る解答を瞬時に生み出して右手に投影し、盾を砕くことが出来る。
だがあくまで一つの対象への最適解であるため、あらゆる攻撃を凌ぐ盾を壊せても、普通の盾はその状態では壊せないため、再度完全係数を調整する必要がある。
六号機リム。(消滅)
魔王具『単機群像』・リムと同等の性能を誇り、魔奏者の意のままに動く五十機のアインヘリア。尖った力はもたないが、単純な性能で魔法兵装を遥かに凌駕するリムが五十機も動く様は圧巻。
七号機アクア。(消滅)
魔王具『完成孤立』・全長十キロにも及ぶ外骨格型の魔王具。多彩な魔法具を搭載しており、単純な殲滅能力だけならばトップである。ただし、使用される魔力量が莫大なため、コアとなるアクアの魔奏者とは別に、魔王具自体にも副兵装の操縦者兼魔力供給のための搭乗スペースがある。
八号機ホワイト。
魔王具『侵略放浪』・次元の狭間に身を隠すことが出来る杖型の魔王具。次元の狭間に入っている間はこちらからも相手側からも干渉は不可能だが、ホワイトはその杖の能力によって敵の位置が把握でき、さらに次元の狭間を移動可能なので、死角からの強襲が可能。
九号機カエン・カレン。
魔王具『再生輪廻』・超再生能力を与える衛星型の魔王具。大気圏外にある巨大な衛星にカエン・カレンとその魔奏者のデータを登録。一定以上の損傷が与えられると自動的に修復を開始する。その回復能力は、魔奏者とカエン・カレン。両者がもろとも消し飛んだとしても、何処か一部でも残っていればそこから再生が出来るほどである。
十号機ライト。(消滅)
魔王具『綺羅旋律』・全身から物理的な破壊力を持った魔力の閃光を放つ装甲型の魔王具。その範囲は町を丸ごと一つ吹き飛ばすほどである。
十一号機レコード。(消滅)
魔王具『運命予測』・敵手の未来の行動を予測して最適な動きを教えてくれるディスプレイ型の魔王具。一見地味だが、運命予測の未来はほぼ確実であり、最大で十秒先の未来を見通すこの能力はシンプル故に強力である。
十二号機セブン。
魔王具『七罪断罪』・それぞれが他の魔王具の能力を劣化させた武装を搭載する七体の使い魔型の魔王具。劣化しているとはいえ、無数の魔王具を単機で操ることによる能力は高い。だが当然のように消耗する魔力の量は高く、その損耗率はアクアを凌ぐほど。
十三号機ライオット。(消滅)
魔王具『天衣無双』・物理、魔術、両方の影響を遮断する障壁を展開する盾型の魔王具。ランクに換算してBランク以下は確実に遮断し、それ以上の攻撃、Aランククラスですら五割は軽減する。
十四号機フェアリー。(消滅)
魔王具『月下三鬼』・敵に特殊な幻影を見せるナノマシン型の魔王具。ナノマシンを用いて、対象にとって尤も最悪なトラウマを見せ付けることが主な使い方だが、ありえないほどの美しい光景を見せることなども可能で、用途は多彩。
十五号機ゴルド。(消滅)
魔王具『豪腕一掃』・敵手の攻撃をそのまま破壊力に変換して蓄積する左腕型の魔王具。蓄積した破壊力は任意で放出が可能であり、相手の火力が高ければ高いほど、放たれる一撃の威力は肥大する。
十六号機ツヴァイ。(消滅)
魔王具『森羅絶刀』・十三号機の天衣無双すら切り裂く鋭利な刀剣型の魔王具。斬ることしか出来ないため汎用性は低いが、一撃の威力は魔王具中でも最強ランク。
十七号機アイシャ。
魔王具『防壁生命』・魔奏者の搭乗するコックピットを囲む絶対的な防壁を展開するコックピット型の魔王具。単純に魔奏者の命を守るためだけにしか使えないが、動力炉もろとも守られているため、例え破壊し尽くされてもアインヘリアの特性上、時間があれば蘇生は可能。最も弱い魔王具であり、最も安全な魔王具である。
十八号機ブレイカー。(消滅)
魔王具『神速波動』・初速で最速を可能とするブースター型の魔王具。音速を容易く突破することが可能であり、アインヘリアの索敵はおろか、運命予測の未来予知ですら時間がかかれば処理しきれないほどの速度を可能とする。ただし音が凄まじく煩いため、それを頼りに察知される恐れがある。
補足・2
魔法兵装
大戦中期より製造が開始された、現代でも戦場でエースとして活躍するアインへリア。その性能は一機で戦局を左右するほどのものであり、基礎性能ですら魔人兵装級のアインへリアを遥かに凌ぐ程。
さらに固有の装備品である魔法具を使用することによって、まさに一騎当千の名に相応しい性能を誇る。ただし魔王兵装程ではないが起動に必要な魔力量が膨大なため、搭乗者にはそれに見合った魔力を所有することが最低条件となっている。
そのため、技量が未熟な魔奏者が搭乗することもあり、そこを突かれて魔人兵装級に破壊された機体が幾つか存在する。
補足・3
魔人兵装
大戦初期に製造が開始され、当時は現在の魔術兵装級アインへリアのポジションにあったアインへリア。だが現代では『喪失された秘術』認定されているため、一部のエースに出回っている程度である。
固有の魔法具を所持している個体は無く、かつては見た目も統一された規格だったらしいが、帝国崩壊の余波で残ったのは殆どが後期改修型か、エース用にチューンされた機体であったため、現代に出回っている魔人兵装の殆どは大部分で似通っているものの、所有する武器や見た目の幾つかに変更点が見られる。
尚、アール・ヴァーミリオンが搭乗した強化型魔人兵装ヴィジョンは完全なワンオフの機体であり、クロガネを元に製造された全てのアインへリアのアーキタイプを戦闘用に改修したものである。
補足・4
魔神兵装
大戦よりも遥か昔、アースフォーリアの外より持ち込まれた原初の『喪失された秘術』。だがその存在は殆ど謎に包まれており、本人であるクロガネですら自分のことわかっていないというのが現状。
その性能が完全に発揮されれば、世界そのものを容易に亡ぼすことが可能であり、まさに所有者を神にも悪魔にもする恐るべき魔神、そのものである。
※以下、別作である不倒不屈の不良勇者を読んだ方に公開出来る資料となります。読んでいないという方は無限地平シリーズより不倒不屈の不良勇者に載せている敵性存在の項目を読んでいただけたら幸いです。
クロガネが製造された経緯には諸々あるが、大まかに纏めると敵性存在の一人、リームシアン・ヴァーミリオンが考案した『プロジェクト・レギオン』の最終段階で生み出された最後の試作機ということになる。
計画の最終目的であった『群れなす心臓』の完成品と、計画過程に編み出された数多の武装を搭載されたクロガネは、まさにリームシアンが望んだ究極兵器の雛形に相応しい性能を秘めている。
だが『群れなす心臓』そのものがリームシアン専用に作り上げられた永久機関であったため、彼女か、あるいはその眷属以外には本来使用不可能であった。しかし、その不可能を可能としたのが、『群れなす心臓』の魔力を受け付けないアルフレッドであり、その存在が現れることを事前に予測していたからこそ、リームシアンはアースフォーリアにクロガネを封印したのであった。
とはいえ何故自分の手元に置かずにあえてアースフォーリアに封印させたのかという理由は不明である。
ちなみに、計画自体は既にクロガネに搭載された『群れなす心臓』の製造が成功した時点で終了しており、現在は計画の次の段階である『プロジェクト・セフィラ』に移行。人工的なアースセフィラそのものの建造を目的としたこの計画は着々と進行しており、『群れなす心臓』を幾つも搭載した超巨大可変人型決戦兵器『スーパーヴァーミリオン(仮)』は、試験飛行をしながら今もアースセフィラのどこかを彷徨っている。
その全長はなんと地球とほぼ同一サイズ。これでもまだ計画の目的からすると爪の垢程度のサイズでしかないというから驚きである。