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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
激闘モード
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カンネの戦い ~前夜 その2

「また休憩か…」


 俺は例のメイド小隊の守る馬車に乗って戦場に向かっていた。先鋒はファナ、第2陣にジークフリート、3陣がランジェ、4陣がリィ、自分と美国ちゃんが5陣で、殿が立松寺であった。前回の対戦で負傷したカミラちゃんは参加していない。


とにかく第2陣の天界軍の進撃が遅く、度々、進軍が止まっていた。先鋒のファナとの間があいてしまい、連絡調整に手間取る。いわゆる大渋滞と言う奴だ。天界軍が5万という大軍であることが理由だがそれに加えて重装歩兵が多く、進撃速度が遅いことが理由だが、指揮官のジークフリート大司教がわざと遅らせているとしか思えない。


度々リィやランジェからも急き立ての使者がジークフリートの陣に行ったが、何かと理由を付けて動かないのである。


「陛下、早くしないと予定の時刻に毎に合いませんわ」


そう俺のスケジュールを常に確認している侍従長のロレックス嬢が言う。


「戦場まであとどれくらいだ?」


「普通に移動して6時間というところでしょう。遅れは10時間以上です。すでに布陣していなければいけないのに…」


オメガ次席侍女が休憩のために持ってきたお茶を運んできながらそう言う。


「魔王様、ジークフリート大司教、信用できません!」


ピアジェちゃんが前方をにらんで言うが、かわいらしい表情なので事の重大さがうまく伝わらない。なにしろ、俺の率いる魔王第251特殊小隊はすべて美少女の悪魔で構成される。まさに小悪魔小隊である。後ろの美国ちゃんの筋肉おっさん800人の軍と比べるとお花が舞い散る可憐な空気が流れる。


「リィ様より使者が参りました。カオス軍先鋒がカンネ平原に達したということです。会戦は明日早朝の予定」


「おいおい、夜通し歩いてじゃあきついぞ!」


「できれば、暗くなる前に布陣を完了したいですが…」


戦場には間に合うが、一睡もせずではさすがにきつい。兵もきついが、ロレックスちゃんたちの美貌にも影響が出る。また、のろりのろりと動き出した。夕方には先鋒のファナの軍はジゼル山の山頂に達するだろう。


そうすれば、元馬も安心するはずだ。そう思った俺だが、今夜の野営でリィかファナかがやってきそうな予感がして、急ぎ、オメガ嬢に精力剤入りドリンクを注文した。いくら俺でもリィとファナ2人の相手はきつい。


もしかするとランジェまで加わるかもしれない。そうなると明日の戦いは寝不足で見学だ。それはそれでいいが、前回のように命を取られそうになるのは困るので、殿の立松寺の軍から離れないようにしないといけないが。


「カオスの軍、すでに30万を超えています」


伝令兵の報告に満天の予想はほぼ当たっていた。明日までに全軍が揃うだろう。それまでにイレギュラーの魔王の軍が来ないと自分の軍だけで対応しなければならない。10倍以上の敵と対するのはさすがに厳しい。


「まだか、まだ来ないか!」


「き…来ました!深紅の獅子の紋章、ファナ・マウグリッツ様の旗印です」


元馬は望遠鏡で山の頂を見る。確かにファナの軍だ。


(やっと到着か…)


ファナの後に白いペガサスの旗印が見え、ジークフリート貴下の5万が山の麓へと移動している。だが、天候が急変し、雨が降り始めていた。ファナの1万2千は規定通りの場所に布陣したが、ジークフリートの5万は山の麓で移動を止めてしまった。おかげで第3陣の白い翼の旗印のランジェの軍と双頭の蛇の旗印のリィ・アスモデウスの軍が山の途中で布陣する羽目となった。


「これでは反包囲体制は完成できませんわ。ジークフリート卿に急ぎ使者を」


満天が作戦地図上の駒を眺めて兄に進言したが、ジークフリートからの使者は、天候悪化で進軍が困難であり、また、敵の夜襲の恐れがあるためと言ってきた。早朝に移動するから心配なしというのだ。


(平野に降りて布陣していないとはいえ、山の麓から敵の横腹をつけば、反包囲は完成する。だが、ヘタをするとファナの軍が孤立する恐れはある)


元馬はそう考え、今一度、ジークフリートの陣に催促の使者を出したが徒労に終わった。魔王とはいえ、天界軍に命令を出すことはできないのだ。彼らは同盟軍であり、指揮権はあくまでも天界の元老院より指揮権を預かったジークフリート大司教にあるからだ。


「ジークフリート卿も天界の武人。戦いになれば、カオスに対してその力を見せるだろう。味方最右翼以外の布陣を再確認し、今日は各自、しっかり休むよう伝達せよ」


激熱の魔王、源元馬はそう命ずるしかなかった。



「ふん。ファナとか言ったな。あの女」


ジークフリートはジゼル山の麓の要害の地に陣を張り、一歩も動かない。後方のランジェやリィの軍を押しとどめていた。


(あの女には例のパーティで恥をかかされたからな。明日はあの女が私に屈して援軍を要請するまで高みの見物をしてやろう)


そうジークフリートは考えていた。布陣から考えて自分がかなり戦況を左右する位置にいることは分かっていた。規定通りの場所だとカオス主力軍の左翼とまともに戦わなければならない。ファナに一手に引き受けさせ、敵が疲弊した瞬間に打って出れば勝敗を制するのは自分である。そうジークフリートは目算していた。自分が勝利のカギを握るためには後方の魔界軍を戦場に出させてはならない。


「ふん。手柄とは自分から立てられるように画策するのだよ」


そう小生意気な大司教は山の頂上にいるであろう憎き魔王の陣を見た。跳ね馬の旗印であるイレギュラーの魔王とウサギのシルエットの第16側室の陣がそこにあった。


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