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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
激闘モード
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魔王の反乱 その1 激闘モード

 ラ・パルマスの地で思わぬ大会戦になってしまった3魔王とは別行動で、暴虐の魔王こと一柳宗治は、魔界の中でも現政権に反抗的で反乱を起こしている魔界の過激派集団「アビス」の根城である南部都市カルタゴを包囲していた。


魔王が君臨し、万全な体制となった魔界としては、カオスとの全面戦争に障害のある内部不満分子をこの際、徹底的に叩き潰しておこうという元老院の判断である。無論、元老院の判断とはいえ、決定を下すのは魔王であるので、宗治が決定してこの地に来ている。


カオスは大軍であるので、宗治だけがこの戦場にあるのだが、過激派「アビス」の戦力は侮れないとはいっても、魔王率いる精鋭軍団には遠く及ばないし、指揮官も魔将軍クラスはいない。ということは、魔王や正室、側室を倒せる人材はいないわけで、戦いが最終的には指揮官の一騎打ちで決まるこの魔界のルールでは、「アビス」の勝ち目は皆無であった。


ただ、まともに戦っては勝ち目のないアビスもテロ行為に関しては脅威であり、前魔王も敢えてアビスの本拠地であるカルタゴを攻めなかったのは、泳がせておいて魔界内部に深く浸透している「アビス」の同調者を調査する必要があったからだとも言われている。


それを一切無視して、このカルタゴを包囲しているのは、そういった心配がもはや杞憂であり、この際、草木一本も残らず消滅させることに何の障害もないからだ。宗治が率いる軍は3万余、第5側室カテルが1万、第11側室蝶子が4千、第6側室カルマが7千と総兵力は5万1千。これに正妃である土緒夏妃の2千と彼女の護衛のひかるちゃんの部隊が5千が加わる。夏妃は「絶対回復」能力があるために、魔界軍の被害は0であり、彼女の力が及ぶ範囲では、ほぼ無敵となる。


「明日、総攻撃をかける。町の住人はすべて死滅させよ」


軍議で宗治がそう命令をする。カテルも蝶子もカルマもうなずく。魔王である宗治への反論は立場上、許されない。許されるとしたら、正妃である夏妃だけだ。目を閉じているカテルや宗治の顔から眼を離さない蝶子と違い、内心は意見を言いたい物部カルマは、夏妃の目を見た。それだけで彼女の思いを夏妃はくみ取った。カルマが合図しなくても夏妃はかん言するつもりではあったが…。


「先輩、戦闘を開始する前に降伏勧告してみてはいかがでしょう」


ジェノサイドはいけません…とこの正妃は言わなかった。敢えて言わないところに彼女の賢さがあった。否定ではなくて代案の提示である。


「夏妃、お前はやはり優しいな。だが、その勧告をやつらが受け入れるかどうか」


確かに今更ながら、受け入れるとは思えなかった。それに現在のアビスは絶対的リーダーがいなく、決断をすぐ下せる体制にない。降伏勧告をどうするか賛否両論で結論が出せない恐れもあった。だが、夏妃としてはいかにアビスの本拠地とはいえど、町の住人すべてを抹殺など受け入れることはできない。


「先輩、魔王たるもの王者の風格を持ち、常に大きく構えている必要があります。強者には勇を弱者には慈で接するべきかと」


「夏妃、アビスは聞くところによれば、先々代の魔王の時代に天界との和平に反対する勢力が結成した集団だという。奴らの敵は天界であって魔界ではない。だが、実際、奴らは天界ではなく、魔界に災いを与えているバカ者だ。そのような輩が降伏したとはいえ、魔界に役に立つとは思えないが」


夏妃はいやな予感がした。魔界に役に立つではなく、自分の役に立つというニュアンスが嗅ぎ取れていたからだ。この魔界に来てから一柳宗治はますます寡黙になり、自分の考えを述べる機会はとんとなかったが、夏妃には彼の心境がなんとなく想像できていた。


(先輩は機会を伺っている。先輩にはカオスも天界も魔界も意味がない。先輩は先輩の支配する世界を創造しようとしていると思う。もし、そうならば、アビスは後顧の憂いを立つために徹底的に叩かれるか、懐柔して自分の陣営に組み込むかのどちらかであろう。懐柔する場合は、宗治に力を認められなければならないが、もし、認められなければ本当にこの人はすべてを抹殺するだろう)


「陛下、魔王陛下。カルタゴより使者が参りまいりました。魔王様に全面的に降伏するとのことです」


「こちらから勧告する前に降伏とは…これが魔界を悩ました過激派の末路か」


目を閉じながらカテルがつぶやいた。


「宗治…いや、陛下。アビスの罠では…」


カルマが心配そうに宗治に言ったが、宗治は腕組みをしてふっと不敵な笑みを浮かべただけであった。

 

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