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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
激闘モード
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ラ・パルマス会戦 その4 激闘モード

 カオス軍にしては少ないその兵は、撃破された兵であった。カオスの上将軍であるカトバブレスは、兵士に紛れ込んで死んだふりをして機会を伺っていた。そして戦場が移動し、自身が魔界軍の後方に位置した時に、自身の特殊能力「修復」を使用して壊された兵士をよみがえらせた。


修復の効果はせいぜい30分といったところだが、目的を果たすには十分であった。黒いカオスの鎧に上将軍である金色の複雑な紋章をカトバブレスは、今度は惜しげもなく見せた。先ほどはわざとかくして、兵士の残骸にうもれていたが、有利な立場であると確信するとこれみよがしに出す、狡猾な性格であった。


「ふふふ…戦いは頭でするものだよ。そして、弱い奴から狩る!」


 彼の目標はわずか30人の魔王の小隊と800人程度の側室の部隊。魔王は人間同様の力しかなく、序列16位という小部隊の側室は、その率いる人数からして、上将軍たる自分の敵ではない。王から命ぜられて、まるでかませ犬のような扱いでこの戦いに参加することになったが、どういう状況でも手柄を立ててきたのだから、自分は上将軍なのだ。


(そこがまともに戦って死にやがった、ホーントとは違う)


同じく、上将軍としてこの戦いに参加して、先ほどドラゴンランスの前に倒された同僚の愚かさが笑える。この戦い、普通にやれば負けるに決まっている。敵の10倍の戦力で当たるのがこれまでのカオスの戦い方なのだ。わずか3倍で敵の主力である魔王と戦って勝てるわけがない。


「今回は2匹狩って、個人的な手柄で終えるとしよう」


 俺は突然現れたカオス兵に仰天した。立松寺の軍が前進し、かなり間が空いてしまったので、前進しようか迷っていた矢先に倒れていたはずのカオス兵が次々立ち上がっていくのを呆然と眺めて、それが大軍になっていくのを確認しただけだった。冷静な侍従長のロレックス嬢もぶるぶると震えて声も出ない。ましてや他の女子など手にした槍などは飾りに過ぎない。


「ま…魔王さま…」


俺は左右のロレックスとオメガ嬢の手をぎゅっと握り、足元にしがみつく、ピアジェちゃんにミューラーちゃん、ラクロアちゃんらを安心させるように声を発した。


「心配するな!俺が守ってやる!」


ヒュー…かっこいい!これなら、Hな要求はNGなどと言っていたロレックス嬢も俺に惚れるに違いない。惚れたら惚れたで困るのだが…。


だが、俺に勝算があるわけではなかった。ただの人間の俺など、たぶん、足にしがみついているピアジェちゃんより弱いことは間違いない。


「あっ!カミラ様の軍が!」


4千のカオス兵がまさに俺の本陣に到達する瞬間にその横から、カミラちゃんの3千5百が突っ込んできた。少し崩れるカオス兵。だが、上将軍カトバブレスはカミラの部隊は計算に入っていた。元々、同数では魔界の兵にはかなわないが、カトバブレスは強化の魔法をかけていた。


これは10分程度、攻撃力、防御力とも3倍に高める。10分後はその反動で半分に落ちるから、使えばいずれ負けてしまう魔法であるが、今の場合は大いに有効であった。いずれ前線の魔界軍の各部隊がUターンしてくるからいずれ全滅は免れない。ならば、10分間、カミラの部隊の足止めしておけば十分である。


「見つけたぞ!魔王の小僧。ここで死んでもらおう」


カトバブレスは大きな戦斧を振り回し、陣地に侵入してくる。ハーレム小隊の女子たちは恐ろしさに誰一人、立ち向かえない。


「キャー!」


「助けて!」


ロレックス侍従長やオメガ次席侍女が、俺にしがみつくから逃げることもできない。このまま真っ二つか!と思わず目をつむる。


ガキン…と金属がぶつかる音がする。瞼をゆっくり開けると


大剣でその戦斧を受け止めた戦士の筋肉隆々の後姿が目に入った。そのおっさんは見たことがある。美国ちゃんの親衛隊長、オズボーンのおっさんだ。りっぱな顎ひげにちょこんと赤いリボンを結んで、まったく雰囲気に合わないのだが、これは美国ちゃんに結んでもらったというもので、本人は涙を流して拝領したという話だ。


(美国ちゃんもセンスが悪い)


間一髪で難を逃れたとはいえ、相手は上将軍であるから、いくら親衛隊隊長でもかなう相手ではない。カトバブレスの第2撃でオズボーンのおっさんは横へ吹き飛ばされた。だが、

自分の前に小柄な少女が立ち、カトバブレスとの間に入った。


「み…美国ちゃん!」


雪村美国。序列16位にして唯一、魔王の愛を受けずに側室になった少女だ。


「夏先輩を襲うなんて、この雪村美国が許しませ~ん!」


甲高い声を上げるが、可愛い女の子の声だから、まったく威圧感がない。カトバブレスは戦斧を構え直すとその無防備な側室の女を見てあまりの緊張感のなさに、自分は何をしているのを忘れてしまいそうになった。だが、背後からの戦いの怒声に自分を取り戻した。


「これは魔王様に、都合よく側室様までご一緒とは。手間が省けました。早く始末しないと私も逃げる時間がありません」


カトバブレスのセリフもその通りで、自分の復活させたカオス兵はあと数分で消失するだろうし、そうなればカミラが乗り込んでくるだろうし、もっと上位の側室がここへ殺到するだろう。そうなれば、上将軍の自分も逃げられない。


(3分ってところか…)


目の前の小娘を叩き殺し、魔王の小僧の首を落としても十分な時間だ。


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