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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
激闘モード
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ラ・パルマス会戦 その1 激闘モード

 中央軍を指揮する俺の前衛はリィ。その左翼にランジェ、右翼にファナという布陣。後方には妃殿下元帥の立松寺率いる2万が控え、その後ろに俺のハーレム小隊。真横にカミラちゃんの3千5百が布陣している。


そして一番後ろに美国ちゃんの部隊。これが800人というこれも前代未聞の少なさであるが、美国ちゃんの部隊は通称「筋肉オヤジ大隊」と呼ばれる特殊な部隊であった。


人間界からやってきた小柄な少女にまったく不釣り合いの筋肉もりもりのおっさん800人という汗臭い集団が護衛している。全員、美国ちゃんを崇拝しており、士気は異様に高いが800人という小部隊では戦場では活躍のしようがない。


美国ちゃん個人の戦闘力も未知数で今回の戦いに彼女を参加させるかどうかも悩んだが、当の美国ちゃん自身が参加を望んだこともあって、この戦場にいる。一応、前線からもっとも遠いので今回の戦いの予定では彼女まで戦うことはおそらくないだろうと思う。


親友のカミラちゃんの陣地も近いのでお互いに行き来しているようだが。


「魔王様、ただ今、報告が入りました。左翼を担当するエセル様の軍団が戦闘状態に入ったようです。まもなく敵中央軍と我が方のファナ様とリィ様の軍団も戦闘が始まります」


「そ…そうか」


 俺はテントから出で、前方の戦場を見渡した。左に位置する隆介の軍団が敵と激しい戦闘を行っている。戦いの怒声が聞こえている。左翼の先方はエセル・バール率いる6千で、カオスの右翼2万に果敢に攻撃している。エセルが支えているうちにメグルの率いる6千5百が右に回り込んで敵を反包囲しつつある。


この辺りは天智の魔王と呼ばれる隆介の作戦であろう。魔界軍の兵士が盾と剣を奮い、カオスの兵士を倒していく。人間界では近代兵器による電子戦が主流と言うのに、なんと古いことか。学校で習った古代ローマの戦争となんら変わりがない。


だが、古代ローマと違うのはそうやって大将を囲む兵士を削ぎ落とし、万全な体制で一騎打ちを仕掛け、相手の大将を討ち果たすことで勝敗が決するという一種のゲーム的な要素があることだった。左翼のエセル軍は対するカオス軍を崩すと、エセル自身が敵軍の真っただ中に駆け込み、魔剣レーヴァテインでカオス軍の指揮官を貫く。


指揮官が倒れるとそれまで組織的に戦ってきたカオス兵はその場で立ち止り、まるで時が止まったように動かかなくなる。それを魔界兵がばっさばっさと切り倒していく。壊れた人形のように壊れていくカオス兵。


「要するに、敵の指揮官さえ倒せば、カオスの軍はただの人形と言うわけだ」


指揮官が倒された1万のカオス兵がなすすべもなく倒されていくのは、虐殺そのものだが、倒れるカオス兵は壊れた陶器のおもちゃのように壊れていくので、凄惨な感じがこれっぽちもない。指揮官が倒れる前とはえらい違いだ。


「カオス兵は指揮官によって命が与えられているのだと言います。ですから、指揮官させ倒せば、それでどんなに生き残った兵がいたとしても、問題はありません」


侍従長のロレックス嬢が隣で解説する。


「ですが、敵指揮官を倒せるのはこちらの指揮官のみ。魔界の将軍クラスしか倒せないのです」


次席侍女のオメガ嬢が補足する。


「側室は将軍クラスと聞いたが、魔界にも将軍はいるのだろう。魔王やその女の子たちが戦わなくてもいいのではないか?」


俺はそうロレックス嬢に問いかけた。いくら強いと言っても、やはり女子だ。リィやファナやランジェにカミラちゃん、ましてや愛しの立松寺…ついでに美国ちゃんが危ないことをするのは納得ができない。


「将軍は生まれながらにして決まります。それはごく稀であり、現に今の魔界には魔将軍はわずか3人しかいません。側室様や妃殿下、魔王様が戦わねばとても戦いを続けることはできないのです」


前大戦で完膚までに叩き潰したはずのカオスも代替わりのすきに勢力を盛り返してきたのも、戦いを支配する指揮官不足が原因である。これは協力体制をとっている天界も同じで、カオスの指揮官を倒せるのは天界でも数えるほどしかない。


敵の右翼が崩れていくと同時に、俺の率いる中央軍、リィ、ファナ、ランジェの軍がカオス中央軍と激突した。圧倒的な数で押しまくるカオス軍。俺は思わず、彼女らの安否を気にしたが、少数なのに魔界兵はまるでバターをナイフで削るようにして戦力を削いでいく。


そして圧巻はリィ。彼女は魔槍フィン・マークルを召還すると、それに魔力を込めて敵の指揮官めがけて投げつける。するとその魔槍は巨大化して、ビルほどになり対した1万余のカオス兵もろとも指揮官を葬った。


「心配する必要もないか…リィ一人でこの戦いは決まってしまうのではないか?」


「いえ、魔王様。敵の指揮官は今回は将軍クラス。これが上将軍や大将軍になるとこんなに簡単にはいきません。カオス兵は無限に湧き出てきます」


ロレックス嬢は有利に戦いが進行するにも関わらず、不安げな表情だ。この戦いは勝つにしても最終的勝利がいかに困難かということを物語っていた。


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